男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

フライトナイト

細かい部分を身体が覚えている

中学生当時、”吸血鬼モノ”にハマっていたボクを直撃した傑作ホラー。『サイコ2』の脚本で注目されたトム・ホランドが満を持して監督デビューをした作品で、吸血鬼という古典的なモンスターを現代によみがえらせた傑作。

隣に引っ越したきた住人がヴァンパイアだったら?

というすばらしくシンプルなプロットが秀逸。しかも、冒頭から主人公のチャーリーがそれに気付くあたりが実に巧く書かれている。ティーンエイジャーものとホラーは相性がいいわけですが、そこにヴァンパイヤという古典をからめるアイデアがまず抜群で、実際そのプロットの力だけで前半部分を疾走する。ヴァンパイアであるダンドリッジが圧倒的な吸血鬼パワーを使ってチャーリーを追い詰めていく展開も子供心をガッチリをつかむ。ダンドリッジに扮するクリス・サランドンの絶妙な色気と醸し出す邪悪さが適役。

ところが、この作品は中盤からさらにすばらしい展開へ舵を切る。

そう、言わずとしれた、ピーター・ヴィンセント=ヴァンパイヤ・キラーの登場。


ロディ・マクドウォール扮する、気の弱い落ち目の怪奇役者ピーター・ヴィンセント*1。エルヴァイラよろしく、「恐怖の夜(フライトナイト)」という深夜のホラー映画専門番組のホストで糊口をしのいでいる。チャーリーが彼に助力を求めるあたりから俄然ターボがかかってくるんですね。

ピーターときたら、ちょうど視聴率低迷によって番組を降ろされるところで、チャーリーの恋人エイミーが切り出した500ドルに目がくらんで一芝居打つためにやってくるんですね。しかし、偶然手鏡にダンドリッジが映らない事に気付いてしまったからさあ大変(吸血鬼が鏡に映らないとか、十字架に弱いとか、日光に弱いとか、そういう弱点も古典通り取り入れられているのもこの映画のすばらしいところ)。

このピーターが、気が弱いながらも仕方なしにチャーリーに味方しつつ、徐々に戦いの中で本当の”ヴァンパイヤ・キラー”になってくるのが最高なんですよ。それでもやっぱり気の弱いところはありつつ。

映画の後半は完全にピーターが主人公と化していて、ダンドリッジとの戦いが繰り広げられるんです。

特に大好きなのは、十字架を突きつけたときに「十字架の力を信じない者には効果はない」と一笑に付されるんですが、後半になるとピーターが自信満々に十字架を突きつけて、ダンドリッジもその力にたじろぐんですね。この場面は実に燃えます。


中学生の頃に観まくっていたせいで、20年ぶりぐらいに観たにも関わらず、セリフや動きのタイミングが身体に染みついていて愉快痛快でした。

チャーリーの友達が吸血鬼になってお母さんに化けているシーンで、オーバーな動きで懐からメモをとるんですが、大人になってもその動きとセリフだけが身体に残っていて、「なんで、メモを取り出すときに変な動きを思い出すんだろう?」と不思議だったんですよ。その正体がこの映画だったことに大笑いしました。本当にどうでもいい話ですけどね。

「ディィナァアー・イン・ディ・オーヴンンンン!!!!」


トム・ホランド、久々に新作でも観てみようかなあ。



 

*1:ピーター・カッシングヴィンセント・プライスからつけられた名前であることは説明不要でしょうが、本編でもピーターが「もちろん名前も芸名だし」と言っているのがおかしい。そして、本名が明らかにされないのもすばらしい。