恐怖のメロディ
スターチャンネルHV
昔ビデオで観たときは凄く汚い画質だったのですが、今回のHD放送は非常に綺麗にマスタリングされており、この映画の印象を大きく変えてくれます。
クリント・イーストウッドの記念すべき初監督作品ですが、処女作にはその作家のすべてが詰まっているという言葉どおり、イーストウッドの隠れた側面が充満していますね。
中盤のジャズのライブシーンが意味不明に長いのもイーストウッドの音楽の嗜好をしれば納得できます。
そして、重要な”女性恐怖症”がメイン・テーマになっている点もイーストウッドらし過ぎます。精神的にいたぶられるのもお約束でしょうか。足りないのはアイスクリームを食べるシーンぐらいか。
しかし、ストーカーという言葉の無い時代ですが、先見性のありまくるシナリオですねえ。この手のドラマの見せ場はほとんど盛り込まれていることに驚きます。
この映画でもイーストウッドが恋人といちゃついているカットで、実はずっと背後の丘の上から見られているという絶品の恐怖ショットがありました。観客にちゃんと明示しているのにカメラがズームするまで気付かないという演出が怖さを引き立たせますね。思わず巻き戻しちゃいましたよ(テープっぽい言い回しですね)。
また、緊迫したシークエンスなのにメロウなジャズが流れているという感覚もイーストウッドが普通の作り方をしない監督だということを一作目から象徴していますね。