男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ギンティ小林による『アート・オブ・ウォー』紹介

本棚が届いたのが一週間前だというのに、やっと今日本を片付けました。

今回念願だった”大判になってからの映画秘宝を買った順にちゃんと本棚に並べる”と言う目標を達成して感無量です。並べてみると意外に量が無い気もしますが、最初が『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』の特集号だったりするので、月日の流れを感じますね。来年で10年目ですか。

で、

実はどうしてちゃんと並べたかったかと言うと、映画秘宝の中でもっとも大好きな記事を読み直したかったからです。

それはギンティ小林氏の『アート・オブ・ウォー』の紹介記事。

新作映画情報と言う巻末付近の「まとめて紹介しちゃいました」的扱いの映画紹介ページに載ったんですが、これを読んだとき夫婦揃ってぶったまげるほど笑って、それ以来夫婦そろって「ギンティ小林の文章は最高」と言うのが共通認識になりました。奥さんが観にいった『ダニー・ザ・ドッグ』のパンフレットに寄稿された氏の文章がまたまた超絶素晴らしかったので、その認識は改めて確固たるものになったようです。

見つけるのにも一苦労したので(vo.21で2001年3月号)、折角だから(許可も得ず)再録しようと思います。是非この爆笑記事を堪能してください。そして、ギンティ小林氏の紹介記事があったらこれから一読をお勧めします。

アート・オブ・ウォー [DVD]
ウェズリー・スナイプスが大暴走!!
ウェズ版『007』で『マトリックス』な『M:I-2』!?
『アート・オブ・ウォー』

 少し古い話になるが、99年の僕のベストは『ブレイド』! 全編キメキメのウェズの姿にハートをカツアゲされた男子諸君も多いだろう。2001年には『ミミック』のギジェルモ・デル・トーロ監督による『ブレイド2』が公開されるが、それまで待てない! そして、なぜか深夜にヘビイ・ローテーションで放送される『パッセンジャー57』を、またしても最後まで観てしまった挙句に次の日に寝坊をしてしまうイカした君に、俺たちのウェズの最新作を紹介しよう!
 本作は一言で言えば「ドス黒いミッション:インポッシブル。国家保安チームのリーダー、ウェズ(特技・カンフー)が、何者かの陰謀に巻き込まれ中国の国連大使暗殺事件の犯人にされてしまい、真相究明に乗り出す。と、それなりにハラハラな物語が展開される……はずだった。が、ウェズの特徴である、あの裏表のなさ過ぎる瞳がマズかった。終始、そのマナコをグラサンで封印していた『ブレイド』と違い、今回はトゥー・マッチ・ピュアな瞳を解禁。「巨悪に追われる逃亡者」のはずが結果、「追ってきた敵役にカンフーやガン・アクションを嬉しそうに披露する黒い中学生」にしか見えなくて、個人的には大変合格な作りになっている。
また逃げる道中、路駐してある車を逃走用に奪う、というお約束のシーンがある。そこでウェズが選んだ車はダッシュ・ボードをパープルに統一し、座席を豹柄でコーディネートしたゴキゲンなアメ車。そんなゾク車チックな車で逃走した日には目立つこと間違いないのに、「隠れなきゃ!」とハラハラ運転してる(つもりの)ウェズの姿は「先輩から借り受けた車を傷つけないように慎重に転がすツッパリ(彩の国・埼玉在住)」にしか見えなくて違った意味でハラハラさせてもらいました。
 そんなBe-Bopな逃走劇の果てに見つけた真犯人との一対一の対決では、至近距離から多弾数速射のハンドガン戦を見せてくれる。ココは『マトリックス』でお馴染みのCGで描かれた弾道をよけながら撃ち合う銃撃戦になっている。ただし、スローに迫ってくる弾丸を優雅によけていた『マトリックス』と違い、本作では標準スピードでビュンビュン飛んで来るCG弾丸をウェズがアタフタとよける。その、忙しいったらありゃしない姿は、灼熱の鉄板の上に放り出された猫のようで、迫力に満ちた場面に仕上がっている。
 と、これまたウェズの黒い中坊っぷりを堪能する傑作で、数年後にはコレも深夜にヘビィ・ローテーションでオンエアされることは間違いなし!
 最後に、以前、『ライジング・サン』の宣伝で来日したときのウェズが語ったイイ発言で締めよう。
「いいかい? 自分の伝記は自分自身で作っていくものなんだぜ!」
 この言葉にジーンと来た僕の今世紀の夢は、僕がウェズの伝記の登場人物、もしくはエキストラにでも……いや! 俺の伝記にウェズが登場することだ!(ギンティ小林

(強調は原文まま)


それほど長くない紹介文に関わらず、ギンティ氏のウェズに対するありあまる愛情とからかいが、見事すぎる爆笑センテンスで十二分に堪能できる名文です。

中でもやはり特筆なのは

「追ってきた敵役にカンフーやガン・アクションを嬉しそうに披露する黒い中学生」

ですね。記憶が確かならウェズのことを「黒い中学生」と称したのはギンティ氏が最初で、これ以降ウェズリー・スナイプスと言えば「黒い中学生」という決定的な尊称で呼ばれるわけですね。(挙句に「黒い中坊」なんてフレーズも同文の中でさっそく登場するあたりもヤバい)

一言で言えば「ドス黒いミッション:インポッシブル

と言うフレーズも凶悪で、なにが「一言」なのかさっぱりわからないながらも、これ以上ないほど的確にこの映画を言い表しているのですから、見事としかいいようがないんですね。それにしても「ドス黒い」って素晴らしすぎる。まさにこれ以外ないフレーズ。

前の文章を受けてどんどんフレーズに勢いが増していくあたりもギンティ氏の特徴で、完璧に書きながら考えているとしか思えないライブ感に満ちていて、型にはまった当たり障りの無い紹介文とは一線を画しています。

映画秘宝はたまにこういった名文が登場するのでヤメられないのです。