男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

運命じゃない人 [DVD]

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こころ温まるのがいいね。

もうすぐ『アフタースクール』が公開となる、内田けんじ監督の作品を観ておこうということで。

留学中に自主制作のナルシス映画を観すぎた監督は、”やっぱり脚本がしっかりしてないと”と言うことを認識したそうです。

この作品では同じ時間軸の出来事を3人の視点で描く、現在では割と定番とも言える技法で製作されています。一つずつ話が展開するにつれ、「あのシーンであいつがそこに!?」という、こういった作品では命とも言える楽しさが満喫できます。ちょっと”のりしろ”の部分が長すぎる気もするのですが、さり気ない重なり方も絶妙にあってイーブンでしょうか。

<以下ネタバレ>


特に三本目で暴力団の組長の視点になるあたりは舌を巻きました。普通は結婚詐欺のあゆみなりヒロイン(?)の桑田真紀なりに視点が移るとおもいきやなので。しかもこの組長浅井の視点では、見栄のために作った札束(何度もアタッシュケースから金庫に入れるのを見せびらかすあたりは爆笑)が今までの2つのストーリーのマクガフィンであることが観客に判明し、それによってそれまでのエピソードが絶妙に絡み合う巧みな構成で唸らされます。

まさに脚本が練りこまれている事が明らかで、こういった作品が作られることは大変嬉しくて楽しいですね。

加えて、キャラクターに対する作者の視線が温かくて、観ていて非常に気持ちがいいのです。この手の作品では暴力団(やくざ)がどうしても薬味のように使われてしまう傾向があるのですが、ちゃんと緊張感を保ちつつ、3つめのストーリーではそれが逆に笑いのタネになるので少しはましでした。

『アフタースクール』が楽しみです。