男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]

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もったいない……

劇場で見逃していたので結構楽しみにしていました。初めてのBDレンタルです。BDレンタルは今のところセル版と変わらないと言うことなので、メイキングや別エンディングバージョンも選択できます。DVDは二枚組みで特典ディスクに丸ごと別エンディングバージョンが収録されているそうで、特典収録時間の水増しが涙ぐましいです。DVDでも最近の技術ならちゃんと本編ディスク内で処理できると思うんだけどなあ。ああ、それこそセル版との差別化なのかもしれませんね。BDは出来ればこのままセル版と同じ仕様でのリリースをお願いしたいですね。

と言うわけで最初のメニューから両バージョンの選択画面が出てきて非常に悩ましいところです。映画の初見は一生に一度だけですからねえ。ドラクエ5ほどじゃないけど結構悩みましたよ。

で、悩んだ結果やっぱり劇場公開版から観ました。

無人になっているニューヨークの光景は予想通り非常に魅力的でした。割とじらしてナイトシーカー何たらはなかなか登場しないので、もっともっと観ていたいなあと思わせるぐらいです。
ただ、無人の街でのウィル・スミスの生活ブリはちょっと物足りないです。一番の問題は食べ物に対する監督の執着が無さ過ぎます。基本的に不味そうなものが本当に不味そうなのが問題です。マッドマックス2のメル・ギブソンが披露した、この世で一番美味そうにドッグフードを食べる神芝居を見習って欲しいもんです。そういえば、犬も似た感じでしたけど、犬ですら食べる芝居で負けてますよ。
原作も基本的にそういう部分に趣を置いているほうではないんですが、映画の世界では孤独物は重要なジャンルですから、もっと生活感をたっぷりと漂わせて欲しかったです。(意識を朦朧とさせて命の恩人が折角作った朝飯に「とっておきのベーコンだったんだ……」とブツブツ言う場面は面白かったですが)

中盤になっていよいよダークシーカーが登場するシークエンスは非常に素晴らしくて、犬のサムを追って真っ暗なビルの中へ入っていく際のただ事じゃないと思わせるウィル・スミスの芝居もいいですし、フラッシュライトの光源処理も暗闇の恐怖を思う存分味あわせてくれます。
唸り声が聞こえたと思ったら、ウィル・スミスがすぐにフラッシュライトの光を手で隠して、ちょっとづつ手をどけては捜索するのも実にいいです。
そして、ダークシーカーたちの初登場シーンの不気味さは特筆物で、もっとハリウッド調のこけおどし系でくるもんだとばかり思っていたのですが、フラッシュライトにチラっと”円陣を組んでユラユラ揺れてる群れ”が映るというセンスの良さ。まさかそうくるとは思っていなかっただけに、石をどかしたら虫が幾何学的に群れていた時に酷似したショック感は絶品でした。しかも、すぐに気付いて襲ってくるのではなく、ずっと顔つき合わせたまま暗闇でユラユラ揺れているだけ。音楽が騒ぎ立てたりしないのも抜群。
後半ただの走るゾンビになってしまうだけに、ここの感覚がずっと続けば間違いなく傑作になったと思います。

原作で大好きだった燃えシーンの一つに、遠出をした主人公がうっかり時間を忘れて日が落ちてしまうシークエンスがあるのですが、今回も犬との悲しい別れに絡めてちゃんと用意されていたのは嬉しかったです。ただ、あの日が落ちてしまった後、吸血鬼をかいくぐって家まで戻る山場が無かったのは残念です。あそこはマチスンのエンターテイメント性がよく出ていて素晴らしいんですが。

終盤はお約束の大襲撃と篭城戦のアクション・シークエンスになるのですが、フランシス・ローレンス監督にはまったくこの手のセンスが欠如しているようで、どこかで観たような展開と映像の連続でかなり「……」な感じです。大体ナイトシーカーたちの映像処理がまったくセンスゼロで、デザインもCGIの稚拙さも没入感をとことん妨げてくれます。生物関係のCGI処理が全体的にお粗末なのは大変残念でした。今時の技術だったらもっとましにできただろうに。やっぱり人間関係は人間が本当に演じるほうが絶対に迫真力あると思いますよ。観た限りできないような映像があるわけじゃないし。

無人の街でサバイバルと言うシチュエーションが最高な分、結構観られてしまうだけにもったいないなあという気持ちがどうしても浮かんでしまう映画でした。


で、

問題のラストなんですが、劇場公開版は原作とはまったく意味合いが異なる「伝説」処理にビックリしちゃいました。「えええ!? そういう伝説!?」と言う感じです。
もちろん事前に製作サイドから再撮影を求められての変更だったことは知っていたので、このいかにもハリウッドなラストも妙に納得は出来ましたし、原作を読んでいなくてお正月の超大作映画(ってほどスケールでかくないのが問題ですが)ならコレはコレでという感じもします。

ただ、

いよいよ問題の別エンディングバージョンを観てみると(今回は吹替えで鑑賞しましたが、どういうわけか劇場公開版になっていたようで、最後まで観て全然変化がなかったのに度肝を抜かれると言うミス。「おいおい! コマ単位の変更!?」と本気で焦りました)、意外や意外にちゃんと原作に近く、ナイトシーカーたちの方もちゃんと進化してあの襲撃は実は恋人を取り返しにくるためだったことが分かります。そういえばボスみたいなのが途中で危険を犯してまで日光の際まで追ってきていたのが伏線になっていたんですね。
劇場公開版とでは丸っきりナイトシーカーたちの捕らえ方が異なり、あちらではただのゾンビ亜種だったのが、こちらではキチンと原作を踏まえた設定になっていますね。
まあ、だからと言って結局最後は『人類にも希望はある』的なニュアンスで終わっているので、結局あの原作の持つSF的な逆転の構図が生み出すラストの衝撃は味わえないんですけどね。大体あれはあれで何が『レジェンド』なのか今度は分からないですねえ。


画質は最近の映画だけあって極めて良好で、HDらしいクッキリハッキリとした映像が楽しめました。一番の美点である無人のニューヨークも実に美しく再現されていて満足です。
ウィル・スミスのやつれた表情が無精ひげや白いものの混じった五分刈りが細密に表現されているのでよく伝わってきます。ただ、ナイトシーカーたちのCGIのチャチさもよく分かってしまうのが何とも……