男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

クローバーフィールド

こういうのが観たかった!

やっと新居も落ち着いてきたので、観にいく事が出来ました。本来初日コースの映画だっただけに、気になってソワソワしていました。

一緒に観た奥さんは、この手の映画にしては凄く楽しみにしていたのですが、観終わった後は案の定「車酔い」状態でかわいそうでした。「でも、面白かったから、あんな撮り方しなきゃいいのに……」という台詞が結構観終わった後にジワジワと考えさせられました。


<以下ネタバレ>


根本的に

”登場人物が撮影しているビデオ画像で構成されている怪獣映画”

と言うのがこの映画の最大の売りであり、一番の魅力ではあるのですが、観ている間中僕自身も

「主観撮影が必ずしも臨場感や没入感に最も適した演出ではないのかもしれないなあ」

と、チラチラ疑問に思いながら観ていました。

怪獣に襲われた街を一般人として疑似体験する”アトラクション映画”としては非常に有効なアプローチなのは確かなのですが、恐らくポール・グリーングラスアルフォンソ・キュアロン、そして『宇宙戦争』『シンドラーのリスト』等の偉大なスピルバーグなどの用いた演出スタイルの方がより効果的に臨場感や没入感を観客に与える事が可能なんじゃないかと思います。

恐らく主観撮影というスタイルは主観のように思えて実際には『誰かが撮影している映像』を客観として観客に強く認識させてしまうのではないでしょうか。

それでもこの映画を非常に楽しめたのは、怪獣が街を蹂躙するシチュエーションを一般人からの視点で描写したことと、登場人物たちを襲うハードルが非常にエンターテイメントしていたからです。

<ここら辺が実は「もしかしたら普通の作劇→もちろん出来れば臨場感満点の演出」で作られたほうがもっと面白かったかもしれないと思った理由かもしれません。>

パーティーシーンから、これ以上ないタイミングでドゴーンと急展開するや、もはや代名詞ともなった自由の女神の頭が吹っ飛んでくるシーンぐらいまでは、描かれている状況も極めて9.11タッチが貫かれています。
ところが、ブルックリン橋が落とされ街が非常事態に陥って軍隊が登場し始めてからは、極めてエンターテイメント的なシークエンスがラスト付近まで続きます。

地下鉄の真っ暗なトンネルを進むシークエンスでは、真っ暗闇からライト点灯、それでも真っ暗なトンネルの先という大変好みのツボとつく映像が続出し、とどめが暗視カメラの映像から一気に怪獣襲撃になだれこむ辺りは完全に”普通の娯楽映画”の展開。

僕の中で最もヒットしたのは、ビルが横のビルに倒れこんでいるシークエンス。撮影者のハドが

「隣のビルから倒れたビルの屋上へ移って中に入ろう」

と冗談で提案したあたりからかなり血液が沸騰していて、それを実行するくだりは悶絶物でした。(ただ、ちょっと残念だったのはビルの屋上部分がセット丸出しだったことでしょうか。他のシークエンスがよく出来ているだけに凄く残念)
ここでも主観撮影のせいでせっかく斜めになったビルの中というパニック映画では最高のシチュエーションが巧く体感できないんですよねえ。登場人物が斜めに動いているだけはどうも……
壊れたビルから外を観ると怪獣がドシンドシン迫ってくる場面も最高で、あそこでもっと「側まで来てるぞぉぉぉぉ!!!」感が体感できればもっと素晴らしかった。

終盤になるとチラリズムを放棄してどんどん怪獣が全体像を現すのですが、残念ながらグエムル同様どうにも人工的なデザイン(思いっきり西洋人の苦手なタコ)なのもちょっと残念でした。個人的にゴジラがどうしてあんなに怖いのかと言うと、人間が中に入っている制約上、すんごいでかい巨人が襲ってきていると言う非現実感が怖いんですよね。キングコングも同様に子供の頃怖かった。
デザイン云々は映画の中でそういう設定なのだから文句をつけても仕方が無いし、充分効果満点で迫力があったのですが、襲撃や出自も謎にして問題のない絶好の作劇スタイルなのですから、人知を超えた「見ただけで発狂」するような恐怖感が欲しかったですね。それを描写するにはやはり前半のチラリズムが必須だったのじゃないかと思います。

色々思うところは多いのですが、編集の巧さや無茶苦茶素晴らしいサウンド・デザイン、怪獣映画として思う存分楽しませてくれるシナリオなどなど、とても満足度の高い作品であることは確かです。

どうせ主観映像というネタは使えないわけですから、是非続編は同じ時間軸で正攻法の臨場感満点演出で作ってもらえればと思います。もちろんプロローグやエピローグは一切無しの方向で。

そういえば、小さい怪獣に噛まれた女性の末路と”どうなったんだ!?”ブリが素晴らしかったなあ。あれも解決無用で。


↑お馴染みの突然公開された傑作特報。怪獣の叫び声はこちらの方が人知を超えた感があって好みです。