男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

REC/レック スペシャル・エディション [DVD]

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こんなに面白かったんだ!

「映画館に行ったら酔っちゃいそう」と言う、言い訳以前の理由でけっきょく映画館へ行かなかったのですが、ブルーレイが出たときも購入せず、「とりあえずDVDでレンタルしてからにしよう」と思っていたら借りられていてなかなか観られませんでした。そうこうしているうちに3ヶ月近い月日が流れてしまい、公開してからだと一年近く、本国の公開からなら……。

これがもう凄く面白かったです!

P.O.Vと言う言葉になっていますが、主観撮影の映像で全編を構成したパターンで作られています。主観映像は感情移入の強化と同義ではないというのが持論ですが、この映画は演出が非常に優れているので主観映像が非常に効果的でした。また、他の主観映画(『クローバー・フィールド』等)とは違ってドキュメンタリーの取材班が主人公たちという設定なので、撮影がプロのカメラマン(実際にプロの人がカメラマン役”パブロ”を演じていて凄く好演。顔が一切でないのも素晴らしい)。劇場で観たらどうかは分かりませんが、モニターでは全く酔ったりすることはありませんでした。「そんな状況でそこまで撮影に固執するのか?」という観客の疑問も、プロの仕事という事で巧く回避しています。

プロットは、”消防隊を取材していたカメラマンと女性キャスターの二人が、同行したアパートで人を襲う感染者に遭遇する”というスタンダードな物。ただし、アパートが警察関係によって隔離されてしまうのが、実はなかなか新機軸になっていると思いました。ゾンビ(とは言っていませんが)物ではロメロ時代からの伝統で”一つの舞台に籠城する”プロットが定番ですが、ゾンビと一緒に閉じ込められる舞台限定物はなかなか新鮮です。アパートの構造が意外にシンプルなのが不安でしたが、そのシンプルな構造がクライマックスの異様な緊張感を作り出していて驚きました。75分とタイトにまとめられた上映時間ですが、ただのパニックに終わらないシナリオも秀逸。

ゾンビの恐怖演出にも素晴らしい”冴え”が発揮されており、最初の老婆の登場カットやその後の登場に関してもイチイチ唸らされます。
長い廊下の先に不気味に立っているだけと言う構図は、ゾンビでなくても一瞬ひるむ怖い映像です。主観映像ならではの迫真性にもあふれていてグッド。

長い1カットの最後に突如吹き抜けから落ちてくる被害者のショットも、見事なタイミングで驚きます。

主観映像ならではの振り向いたらゾンビ系こけおどし演出も抜群で、タメが不必要にない分ショックが大きいです。パニックが起きているのに素晴らしいタイミングで現れる老女のゾンビなどは最高でした。「そこで居る!?」と言う。

手錠に繋がれて見捨てられてしまう母親や、「おまえらが元凶だ」的な内ゲバも要所要所で挿入されて、ゾンビ映画のフォーマットがキチンと守られているのも好感が持てます。

手錠につながれた母親が1カットで立ち上がっているショットなどは、定番中の定番なのに非常に洗練されていて驚き。

<以下ネタバレ反転>

ゾンビ映画に理由付けはあまり必要ないというのが持論ですが、謎の最上階へたどり着いてからの不気味すぎる展開は最高の一言でした。

隔離した連中はそれだけのギミックに終わるのが定番で、それ故に不条理な雰囲気を作り出すのかと思ったのですが、検査員が入ってきて状況の説明がキチンとあったり、それがちゃんと伏線を回収したりとシナリオが練り込まれているのが素晴らしいです。一本の階段とそれぞれの部屋、後は裏にある工場の事務所ぐらいしか舞台装置はないのですが、そのせいで”最上階は以前人がいたが今は誰もいない”と言う抜群のモチーフが効果を発揮していました。

いよいよカメラマンとキャスターの二人だけになってしまった終盤で、開かずの間になっている最上階にたどり着くのですが、そこの部屋の不気味さは、『セブン』のジョン・ドゥの部屋や『羊たちの沈黙』のバッファロー・ビルの地下室なみに不気味な美術。それでいて、壁中に張られた新聞の切り抜きや実験道具などから、おぼろげに感染の理由が明らかになっていくのもクール。ぼろいカセットレコーダーの録音を再生して情報を断片的に提示していくあたりもかなり好みです。

しかも、さらに屋根裏が出現してからが俄然盛り上がって、『エイリアン2』の天井裏の衝撃ショットに匹敵する(分かってるのにびびる)ショックが用意されています。
カメラのライトが壊れてから暗視モードになるのも最近のはやりですが、どの作品でも凄い効果を発揮する鉄板演出。
ここでいよいよ登場するラスボスが怖いのなんのって。不自然にガリガリの体や動きもさることながら、一瞬映る”手に持った金槌”が最悪!
映像で与えられる情報からでしか観客には状況がつかめないので、いい知れない不気味さを漂わせたまま、当然のようにバッド・エンディング。

あの屋根裏の子どもは何だったんだよ!!


演出の多くは今までのホラー映画の良いところ取りともいえるのですが、ここまで絶妙にハマっているとホントに面白いです。

お約束が多いので、「恐怖」という観点からは少し薄めになってしまうのですが、ホラー・ゲームそのものの作りは個人的には大変楽しめました。

しかし、残念だったのはDVDで観てしまったことでしょうか。明らかにHDカメラによる撮影だったので、ブルーレイを購入して確かめたいと思います。

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9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~ [DVD]

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↑この映画の実質的な原作と言ってもいい作品はおそらくコレだと思います。これを観たときの衝撃は忘れられません。消防隊の取材というあたりも露骨なので、オマージュと言っていいかもしれません。
未見の方は是非ごらんになることをおすすめします。