男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ジョーズ 30th アニバーサリースペシャル DVD-BOX (初回限定生産)

遅れに遅れていたamazonの発送。本日遂に到着。

まだまだ安静にしていなければいけないのですが、そんなこと言ってられないぜ!!

と言うわけで、やっとこさ30thアニバーサリーBOXが我が手に届きました。LD-BOXのドでかさと比べるとDVDだとBOXも随分コンパクトになるものですね。

紙の箱に入っています。シュリンク開封口だけ開けて中を取り出すのがポイントですね。帯も無くならないし、こういった箱だと中身の見える覗き窓のような部分が痛まないで済みますしね。

中を開けるとこんな感じです。蓋の裏側に今回の封入特典の一つである「ハイライト・サントラ」があります。ソースは完全盤の方ではなく通常盤のモノのようですが、リマスターしてあるようでやたらと音がきれいでした。ただ、不自然な残響効果もあったようなので、詳細が知りたいところです。選曲としては「檻の用意!」や「エンド・クレジット」が入っていないのに「夜の探索」が入っていたりとオーソドックスにしてあるのが何ともはや…どういった購買層にアピールしているのかがあまりにも不鮮明ですねえ。

ちょっとした小冊子のようになっている「スケッチ本」。

中身は絵コンテと本編の比較と、付加された美術担当ジョー・アルベスのコメント。ちなみにあのコンテはスピルバーグが描いている訳じゃないです(たしかスピルバーグはスコセッシと並ぶぐらい絵心が無かったような気がします)。クライマックスでサメの歯についている有名な歯クソは、ジョー・アルベスが気を利かせてつけたものだと言うコメントがあって衝撃でした。スピルバーグが「何をしているんだい?」と尋ねると、アルベスが「これはクイントの残骸さ」と答えています。てっきりああいう悪趣味なディティールはスピルバーグの専売特許だと思っていただけに驚きました。何にしろあの歯クソはクライマックス中ずっとへばりついていると言う異様な芸の細かさなので、ただの冗談ではない辺りが侮れないですねえアルベス。

パブリシティで使われた見慣れたポストカードのセットです。まあ、これはどれもこれも驚くようなものではないです。

封入特典の35mmセニタイプ。フィルムを一コマ切り抜いてポートレイトに加工してあるのですが、やはりここは限定商品なのだから全部違うコマだったら良かったと思います。「なんで、俺のはヘンドリックスが笛吹いているカットなんだよ!」とかがあると嬉しいじゃないですか。多分全部同じ絵柄だと思うのですが、いよいよサメが姿を現して、三人がいっせいに注目するカッコイイ場面からです。フィルムは当然ながらアナモフィックスで圧縮された縦長で、サウンドトラックも入っています。

こちらはオリジナル・ポスター。しっかし、これ喜ぶ人いるのかしらん?せめて珍しい絵柄のモノならわかるんですが……

・・・

ボーナス・ディスク・レビュー

ドキュメンタリーはめでたくLD-BOXのオリジナルがノーカットで収録されていました。ざっと観た感じでは付け足されている部分はなかったと思います。ジョン・ウィリアムズの部分だけビデオノイズが入るんですが、あれはLDの時からあったかどうか確認していません。
改めて見直しても非常に見応えのあるドキュメンタリーだと思います。これがノーカットで収録されているのは大事ですね。原作執筆の段階から、映画化権取得、スピルバーグが監督に決定するくだりや、紆余曲折する脚本執筆、キャスティングに関する話題、地獄の撮影期間、そして、ポスト・プロダクションの編集や音楽に関しての製作段階から、初めてのブロックバスターとして特大ヒット(全米で初めて1億ドルを突破した映画がこの「ジョーズ」)に至るまでの宣伝戦略についてまでじっくりドキュメントされています。基本的には現在のスタッフ及びキャストのインタビューから構成されていますが、スピルバーグが当時撮影していたホームビデオの映像もあったりして貴重な映像です(それにしても、若いスピルバーグはあんなに撮影が大変だったといいながら、ちゃっかりこういう映像記録を残していたりする辺り、余裕があると言うか単純にヲタクだよなあと感じます)

  • 1974年の舞台セットから

今回の特典映像の目玉とも言える撮影時のメイキング。これは非常に貴重な映像でした。若きスピルバーグがリップクリームを一生懸命塗ったり、インタビュー中に食べているランチを魚に放り投げてあげていたり、やたらと余裕があるなと思ったら、海上撮影が始まって二日目と言うから納得。本人も「これから多分大変になる」と言っているように、案の定地獄の日々を経験するわけですね。「舞台セットから」とか題していますが、本編では使われなかったシーンの撮影現場をリポートする内容でした。スピルバーグがカール・ゴットリーブ(出演・脚本)と台詞の相談をする場面などもあったりして新鮮。

  • 未収録シーン及びNGシーン

LD-BOXからの流用です。銃が作動しなくてどんどん怒っていくロイ・シャイダーが可哀想になること請け合い。

  • サメの実態

特典映像の中で最も期待していなかったと言うか、「なんでそんなもん収録するんだ?」と思っていたのですが、これが思わぬ拾い物で、実に細かくサメと言う魚の生態をじっくり解説してくれます。原始的な生物として完成されている印象ですが、全ての性能が捕食のために発達しているのが凄いです。殆どの感覚器官が「獲物をみつけるため」に特化してるんだものなあ。

  • ギャラリー

撮影時や広告用の写真など。オルカ号の写真は貴重なものも多くて嬉しかったです。

  • 絵コンテを比較

まあ貴重な絵コンテが見られるという意味では良い特典だと思うのですが、スピルバーグの本編の映像が素晴らしいと言う引き立てになっているという気もしますね。特典の冊子のようにコメント付きのモノを多数収録するほうが良かったと思います。

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本編レビュー

二枚組みになった事で、本編にすべての容量を使えるようになったので、前回のDVDよりは映像の情報量が増えてディティールも向上しているようです。ブロディの乗るジープの後部にアンテナがあるなんて今まで気づきませんでした。

もっとも、最近のディスクやハイビジョンの映像に慣れてしまうと、前回のディスクのソースをそのまま流用している今回のディスクはやはり物足りないのも事実です。逆にフィルム傷が目だって見えるぐらいです。

音声については日本盤初収録のdtsはやはり音の厚みが増しているように感じます。低音の効きはドルビーデジタルとの明確な違いは感じられません。波の音とかのほうが効果があるようです。夜になって宴の途中にドカンドカンやられるシークエンスは重低音が増してかなり効果的です。

とは言え基本的に前回のディスクの時に作成された素材を使っているので、リニューアルされた5.1chのサウンド・デザインは残念ながらそのまま。オリジナル音声が遺伝子に刷り込まれている事を差し引いても、やはりクライマックスのオルカ号が沈み始めてからのSEの薄っぺらさは納得できません。スピルバーグ本当にこれを聴いているのか問いただしたいです。作った本人は意外に無頓着と言うか気にするのかっこ悪い的な感じでスルーしているのかもしれないですが、あまりにも厳しい。「激突!」なんかの5.1ch化は非常に効果的かつオリジナルを尊重している良い仕事だったと思うのですが、「ジョーズ」の5.1chサウンドだけは許せないなあ。ライフルの音に迫力を付加したり、ロープが空気を切り裂く音を付加するとかは大いに結構なんですが、仮にもオスカーを受賞している音響デザインを台無しにしてどうするのかという感じです。
クライマックスのオルカ号が沈み始めてからのオリジナル音響デザインは大変素晴らしく、木造の船体が軋む音、気泡の音を含めた浸水音、そして不気味になり続ける警鐘等など、絶体絶命のブロディの状況を音楽が流れない事で明確に観客に印象付ける大変良いデザインなんです。それにくらべてリニューアル・サウンドときたらああた、適当につけられたプールで録った様な浸水音に(台所といっても良い)、閉まるドアは水圧を全く感じないトイレのよう。挙句に警鐘の音は付け忘れているし、時折気恥ずかしくなるような静寂が訪れる。ホントにどうなってるんだよ?

  • 吹替えについて

ロイ・シャイダー谷口節
ロバート・ショー:内海賢二
リチャード・ドレイファス堀内賢雄

による初の5.1ch(そしてはじめてのノーカット収録)の日本語吹替えが収録。これが実は本ディスクの一番の目玉かもしれません。

勿論水曜ロードショーで洗礼を受けた人間としては、

ブロディ=滝田裕介
クイント=北村和夫
フーパー=樋浦勉

の吹替えはマスターピースとして外せませんが、今回の吹替え版は非常にクオリティの高いモノだと思います。

脇役に至るまで声優さんたちが適役で、しかもみんな非常に巧い。
ブロディの谷口節は滝田裕介に比べるとしっかりしすぎている感じも受けますが、どうしてどうして、いざ戦いが始まってからのボヤキ節はなかなか聞かせてくれます。「比べられてたまるか!」は訳も含めて良い感じです。「もっと大きな船を応援に呼んだほうがいいんじゃないのかなあ」もフェードアウト処理も含めて最高です。
クイントの内海賢二はテレビも含めて二回目の収録ですが、キャラがバッチリあっているので文句なしです。戦いが始まった真っ最中だと言うのに無神経にかかってくるブロディの奥さんからの無線に対する応対は聴き所の爆笑シーン。もっとも、クライマックスの断末魔の叫びはオリジナルのロバート・ショーの声をそのまま使っているんですが、内海賢二としてはやりたかったんじゃないのかなあ。オリジナルに匹敵する断末魔を聴かせてくれた北村和夫の吹替えが良かっただけに。北村和夫の吹替えは近づきがたいクイントというイメージでしたが、内海賢二はロバート・ショーの荒くれたユーモア感覚というか、海賊船の船長的な毒のあるユーモアを的確に表現していてさすがと言う感じです。
今回のキャストで一番良かったのはフーパーの堀内賢雄です。樋浦勉フーパーが庶民派だとすれば、こちらはきちんと上流階級の雰囲気を出していて素晴らしかったです。前半部分では登場してからの学者っぽさと坊ちゃん臭さ、後半では段々とクイントらに影響されて男っぽくなってくる感じがキチンと変化していました。テレビ版でも結構いけていた古川登志夫だと軽すぎるかなと言う部分が丁度良くなっていると言う感じでしょうか。