男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

懲りずに宇宙戦争

宇宙戦争」がどうしてビスタサイズなのかについて。

(以下掲示板への書き込みを転載)

ボクもシネスコ信者としては、最近のスピルバーグシネスコ離れは寂しく感じています。ただ、スピルバーグ自身は「シネスコサイズは人間の通常の視野の感覚に反する」(精確ではないです)風なことを言っていたと何かで読んだことがあります。黄金率から導き出された観客が一番落ち着くと言われている(没入し易い?)ビスタサイズを選択しているようですね。
ただ「ジョーズ」や「レイダース」などの完璧にシネスコサイズでの絵作りを演出としても利用していたスピルバーグには是非シネスコサイズを使った娯楽映画もまた作って欲しいと思っています。

で、前置きが長くなったのですが、「宇宙戦争」のビスタサイズ選択について。

<以下「宇宙戦争」のネタバレを含みます>

ジュラシック・パーク」の時には「絶対にシネスコだろう」と思っていた反動もあって、ビスタサイズにはがっかりしたのですが、友人は((画面サイズにそれほど思い入れの無い人間とだけ一応注釈しておきます))、
「恐竜は縦長のサイズだからビスタでいいんじゃないか」
と言っていて、少し納得したのを覚えています。ただ、
「それならスタンダードのほうがいいだろう」
とも思いましたが。
ジュラシック・パーク」は映画のスタイルからしてもシネスコサイズのほうが適しているとボクは今でも思うのですが、「宇宙戦争」はSFと言うよりも恐怖映画としてのスタイルをとっていると思いますので、スケールよりも当然観客の没入感を第一に考えていると思います。ボク自身はシネスコサイズよりビスタサイズの方が没入感が高まるとは思っていませんが、スピルバーグがそう思っているようなので、ビスタサイズの選択はそういう意図があるのだと思います。もう一つには先ほどの恐竜の「縦長」サイズと同様、トライポッドのデザインが縦長の構造=人間を見下ろす構図=恐怖を感じると言うことにも起因していると思います。
さらに個人的な見解ですが、トライポッドの恐ろしい咆哮が「激突」のトラックのクラクションのような効果をあげていたので、更にスピルバーグが原点に返って「理不尽に命を狙われる恐怖」と言うテーマを掘り下げようとしていたのでしたら、もしかしたらスタンダードサイズでもありなのではと思っています。マスクを外したオリジナル・スタンダードサイズでも観て見たいような気もするぐらいです(ワイドサイズに慣れてくると、スタンダードサイズを劇場で観ると恐ろしいほど縦の空間を感じることが出来ます)。
縦の構図を一番感じたのが、中盤のフェリー乗場のシークエンスです。背後の山の頂上に悠然と現れるトライポッドの恐怖は、画面下部に凍り付いているフェリー乗場の人々、画面上部に山の頂上からサーチライトで策敵するトライポッドの縦長のフォルムと言う絵作りが抜群に怖かったと思います。あれはシネスコサイズでは出来ない絵だと感じました。
序盤でこの映画最大の見せ場でもあるトライポッド登場シークエンスでも、トムたち群集の視点を強く意識した構図を多用していて、トライポッドが現れるくだりでは当然アオリのショットが多くなり、更にカメラがパンアップすることでさらにトライポッドの巨大感が強調される効果を生み出しています。((俯瞰は1ショットだけ挿入されて、それがまた良い間を作ると同時に状況を観客に絶妙に把握させていて、スピルバーグやっぱり巧いなあと思いました))これも当然シネスコサイズでは効果が薄れる演出になると思います。特にパンアップでは画面の横幅が狭くなればなるほど縦の移動効果が高まるはずなので。

画面サイズは当たり前ですが、演出意図の重要な部分の一つなので、最近のスピルバーグビスタサイズを選択しているからといって、「宇宙戦争」もまたかよ…と言う早合点は禁物だと思うわけです。