男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

エレファント デラックス版 [DVD]★★★

エレファント デラックス版 [DVD]

エレファント デラックス版 [DVD]

コロンバインの高校生による銃撃事件を題材にした作品。

ロケはポートランドの廃校を使って行われたようですが、風景の美しさが寒々とした作風を強調する効果をあげていて素晴らしいです。
登場人物を延々とステディカムで捉えるトラックショットと、その様々な登場人物の視点が交わる構成も、高校という一つの日常的世界に観客をスムーズに入り込ませる効果をあげています。

本来スタンダード・サイズでの撮影と上映を監督が意識しているということもあって、WOWOWで放送されたハイビジョンがビスタサイズだったことから、敢えてDVDで鑑賞しました。果たしてスタンダードの正方形に近い画角は廊下をフォローする際にもその美しさを強調していますし、先のトラックショットでも左右ではなく上下の映像の流れもフレームに入ってくるので、人物と共に観客の視線を促すという効果はよりよくでていると感じました。

スタンダード・サイズではバストショットなどの通常のミドルショットでは対象の人物を捉えることでいっぱいになり、背景や他の人物がフレームに入ってこないことも、コミュニケーションの欠落を視覚的に強調している印象を受けます。ピントの焦点の選択もかなり意識的に変えられており、孤独感を強調したり薄っぺらい人間関係を表しているように感じました。

また音の処理も地味ながらも効果的で、学校での喧騒が殆ど抑えられて、加害者の一人が食堂で襲撃のプランを練っている時にウワっとそこだけ強調するのが効果的でした。学校での居場所がない人間にはあの喧騒は責め立てられている様に感じるのだという演出をうまく促していると思いました。

ライフルの発射音と着弾音も極めてリアリティあふれる音をつけていて、パンパンという乾いた音から、ドンドンという低音の強調、学校という反響の強い場所での実際の射撃音も非常に効果的でした。この場合の効果というのはズバリ「人が死にそう」ということですが。

物語が様々な登場人物の視点から語られることで、同一に捉えられるはずの加害者二人側の視点が、他の登場人物たちと違って少し差別化がなされているのは個人的に判断が難しいところです。全く同一にするのなら、学校という舞台から外れて彼らの自宅での生活や銃器入手に至るエピソードは不要だと思いますし。

通常でならクライマックスとなる銃撃シーンは残酷感なり緊迫感なりが強調されるはずなのですが、この作品ではそれまでと変わらないトーンが持続するあたりはかなり凄いと思いました。(それの好き嫌いは別として)

ただ、この手のアプローチは嫌いではないだけに、ある意味「そのまま」だなという感じもありました。ああいった衝撃的な題材をモチーフにするのなら淡々とするだろうし、被害者の日常を様々な視点で描いてそれを時間軸をずらせて交錯させるというのも今となっては想像の範疇でしかない構成だとも思います。残酷感を感じさせないというクライマックスの演出にしても、個人的には少し危険な感じもしました。途中でPFSもどきの(このゲームが無駄にダメダメな感じするのは、特定のゲームを連想させないためなのかなあ)射撃ゲームで一般人を撃って遊んでいる加害者(必ず背後から撃つのがまた…)の描写があるのですが、これも常套手段ではないかなあと。