男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

フィラデルフィア

フィラデルフィア [DVD]

再度法廷劇です。やはり法廷はハイビジョンに向いている。

ジョナサン・デミが傑作「羊たちの沈黙」(asin:B0002X7J9U)に続いて撮った映画ですが、こちらも勝るとも劣らない傑作です。全く質の違う映画なのですが、タク・フジモトの撮影やハワード・ショアの音楽など、キチンとこの映画に対するデミ監督の演出をキチンと理解した仕事をしていて感心します。
羊たちの沈黙」では異様な緊迫感を生み出すことに成功した、人物の正面からのアップを切り返す会話シーンが、この作品では望遠レンズによる処理で背景がボケることで人物の孤独感が強調される印象を受けます。勿論話をしている人物に観客の意識を集中させるという、もっともこの演出が効果を上げるポイントも人間ドラマとして適しています(逆に言うとこの手法をホラー映画で用いた点が「羊たちの沈黙」の際立ったところなのかもしれないですね)。

あと観る度に感心するのが、相手側の弁護士を演じているメアリー・スティンバーゲンの巧さでしょうか(「バック・トゥ3」のヒロインです)。仕事だからキチンとやるべきことをしている手腕とは裏腹に、本当の正しさに対してジレンマを抱えているのがヒシヒシと観ている側に伝わってきます。(それでも手を抜かないところがプロっぽくて凄く良い)

アカデミー賞は難病や障害の芝居に弱いのは定説ですが、この映画で主人公を演じたトム・ハンクスは本当に胸にグっとくるいい芝居をみせてくれるので文句がないです。デンゼル・ワシントンに弁護を断られて、街路に出てからの表情とかもう…(ここでかかるスプリングスティーンの「ストリート・オブ・フィラデルフィア」も素晴らしい)
終盤の病気が進行してからの朦朧としつつも頑張っている芝居には、無条件に感情移入させる凄みがあふれています。

裁判劇だからと言って判決によるカタルシスはまったく排除され(そのシーンすらない)、逆にその事でしみじみとした感動がラストで味わえるのも大好きです。

ボクがこの映画で大好きなところは、差別をキチンと描くことで、主人公のアンディを無条件で支える周りの人たちの姿が生きている点です。孟子も言っている様に人間が無条件で誰かを助けるような心情はグっときますね。


<ハイビジョンの見所>

  • 病気のメイク

発疹などの症状がキチンとグロテスクに再現されているので、物語に重要な説得力を与えています。病気が進行してからのトム・ハンクスのメイクも、特に目の周りなどの感じが凄く巧くて、げっそりしたトム・ハンクスの肉体コントロールと共に圧巻です。

  • 風景

風景などの自然描写はハイビジョンの最も得意とする分野だと思うのですが、この映画のテーマに直結しているフィラデルフィアの寒々とした風景は隅から隅まで美しく再現されていて素晴らしいです。「ロッキー」もハイビジョンで観たいなあ。