座頭市(WOWOW)
さて、遂にアンテナ線も新調し、配線もあれこれいじり直してから、いよいよ映画を観ようかなと思ったのですが、HDDレコーダーに慣れすぎてしまって、リアルタイムに放送を観るという行為に異様な違和感を覚えました。具体的に言うと、放送開始までの時間をかなりもてあましてしまうわけです。
子供の頃の、それこそビデオがなかった頃などは、それこそ一期一会の気合で常に映画のテレビ放送に立ち合って来た訳ですから、その頃の「映画を観る」という気合は現在の「劇場で観る」のとほとんど同質と考えられます。待ち望むという感覚もほぼ同じ。
今やそういう感覚はDVDの発売日などでもすっかり失われてしまい、テレビの放送に関しては更に緊張感は失われてしまっています。
今回のちょっとした懐かしい気持ちも、HD対応のHDDレコーダーなりD-VHSを買えばまた失われていくのだと思いますから、今のうちに神妙に味わおうと思います。
という訳で夜の1時の放送を待ってからハイビジョンで観る初めての映画「座頭市」が始まりました。
なんといってもリアルタイムで鑑賞しているので、折角だから映画館の気分を出来るだけ再現しようと思い、部屋も真っ暗にし、先日調整したシネマモードの画質での鑑賞。毎度思うんですが、ホームシアターなどの調整というと「黒」の再現が最も言及されます。それで黒を限りなく再現しようとすると、画面はそれなりに暗くなってしまうのです。実際には黒を抑えるというよりも黒を黒として再現しようとすると結果として画面が暗くなったように感じるわけですが、体感的にはただ単に暗く感じるのは当たり前だと思うんです。逆に言うと劇場では暗く感じることはなく、逆に暗部のディティールがキチンと目視できる。
したがって自分の目を信じて黒レベルと白レベルを出来る限り追い込んで、暗部のディティールがキチンと目視できるように再び調整。
「座頭市」自体、夜の場面が多く影の部分も非常に多い映画なので、そういう意味では丁度良かったのかもしれません。
もっとも、映画のソース自体が結構ざらざらした質感を狙っていたり、全体的に暗めの調子に合わせているので他の映画のときにどうなるかはまた分かりませんが。
AACによる5.1chは音が軽いとかそういう噂もありますが、ボクが聴いた限りではDVDとの違いは感じられませんでした。dtsに比べるとやはり雨のシーンの「雨量の違い」が感じられたり、独特の低音を効かせた切断音に迫力が足りない気もしますが、まあ些細な違いです。充分5.1chとしての再生は果たされているんじゃないでしょうか。
<ハイビジョンの見所>
- 木造家屋の質感
これは目を見張るほど質感が生々しくて感動しました。樹齢の細かい部分や黒光りしている感じまで、美術の仕事をキチンと確認できるという意味でも素晴らしい。
- ガダルカナル・タカが紅い傘をさして家を出てから田んぼの横を通るまでの雨のシークエンス
本編で一番ハイビジョンの特性を感じたシークエンスです。桶に溜まった水に落ちる水滴や、田んぼのディティールや雨の粒子感などなど。
- 刀身に付いた血脂
刀が鞘に収められる際にギラギラと濡れた感じがキチンと再現されていて気味が悪いぐらいでした。
- 釣り池の水面
これも先のシークエンス同様、水面に反射した人物の映りこみの表現も生々しく感じられる。藻の感じなどもキチンと目視できるのが凄い。
- 逆光のシルエット
やくざ衆が密談するシークエンスで、ボスがシルエット処理されますが、障子越しの逆光がキチンと感じられるあたりに微妙なニュアンスの再現までなされていて驚きました。シルエットなのにキチンと立体感が感じられるあたりも細かいディティール再現のなせる業かと。
という訳で、必然的にこの映画が今後のハイビジョン映画を観る際に基準になる訳ですが、クッキリハッキリという映画ではないので、ハイビジョンを観た!という実感は少し乏しいのも事実です。やっぱり洋画とかを観るともっとこう「ハイビジョンすげえ!」という感激が味わえるのではと期待しています(本編の出来は措いておいて)。
恐らくマイケル・ベイの「バッド・ボーイズ2バッド」辺りが怪しい。ははは。