男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

動機について

http://d.hatena.ne.jp/ka-lei-do-scope/20041128#p1

非常に嬉しい反響があったので、もう少し「動機について」思ったことを書いてみます。


>>物語の中で戦う動機として、「怒り」というのは比較的安直な部類に入るもので、あまりほめられたものではないと思うのです。

本当にそのとおりで、「怒り」と言う動機は安直極まりないんですが、個人的体験とソレに対する一般的な普及率を照らし合わせると、もっとも燃費が良いガソリンみたいな存在じゃないかと考えています。

ガソリンや石油を使い続けることは安直だけど、それに対応する機器が普及しすぎているし他の燃料に対する認識が不足していると言う感じでしょうか。

実際「怒り」以外の燃料はもっとクリーンで熱量の高いカタルシスを生むと思いますし、そういった燃料を用いた作品は一段階上質なものが多い気もします。*1

ただ、

そういった燃料でのエネルギーが受け手のニーズに応えているかどうかが、個人的に問題になります。

そこで「マッハ!」なんですが、あの作品の作り手の提示したエネルギーは観客(この場合ボク個人)のニーズには応えられていないんです。ムエタイ・アクションを楽しむ映画としては、十二分に応えているのですが(あの映画を観る観客のニーズはそれだと思うんですが…ちょっとソレは措いて)、アクション映画としてのニーズ=「どれだけ燃えられるか」と言う欲求は全く満たされないわけです。だったら「最後にドーンと盛り上がれば観客は納得する」と言うサリエリ戦法をせめて採って欲しかったと言う事なんです。勿論それは安直なんですが、だったら別の燃料をくべてくれと。逆に言うと一番大事なアクション・シークエンスに安直以下の演出をオンパレードでみせる事に対してゲンナリするというか。

例えば師匠がムエタイで人殺しをしてしまったからめったに使ってはいけないと言う伏線があるわけですから、それを足かせに焦らすべきだと思うんですよね。「弓の引き」としては。ですから、お金を取り戻すためにいきなり敵を倒す最初の闘い(あれはあれで観客の呆然なども含めてムエタイを見せる映画としての方法論としては正解なんですが)では、「戦わずして勝つ」ぐらいの焦らしが欲しかったです。無論今の観客のアクション映画に対するテンポとは相反するので、その代わりに作品を引っ張る燃料が必要になる訳ですから、そこで「笑い」であったり「ラブ」であったりすればいいんです(「ラブ」は吐き気がするほど安直ですが)。

例えば「ダイ・ハード」だと実際のアクション・シークエンスが始まるまでの1時間近くは敵側の目的がなんであるか、どうやって警察に危機を知らせるかというようなサスペンスを使って「引いて」いるわけです。(そういえば「ダイ・ハード」も動機が怒りじゃないなあ)

動機からずれてしまったので戻すと、「マッハ!」の「仏像の頭を取り戻す」と言うのは「貫通目的」であって「動機」として機能していないと思いますし、せっかく仏像と同じ日に捨てられた兄弟同然という設定があるのにそれすら動機にしていない(してるのかもしれないけど機能していない)。「村のため」=「村人が自腹を切って旅費を出してまで」と言う部分が動機として唯一機能していますが、井戸水が干上がる描写が一回あるだけだから描写不足。あれは聖なる巨木がせっかく冒頭にでてきてるんですから、水不足で枯れてくるぐらいのベタさが欲しいもんです。ラストだって仏像の頭を取り戻してもそれに対する描写がない。ベタでも土砂降りになって村人が感謝感激する中を主人公が凱旋するぐらいは欲しいところです。



ううん…ちっとも「動機」についての明確な考えを書けないんですが、乱暴に言うと、「怒り」に代わるような点火方法を見つけられないならせめて「怒り」で点火させて欲しいという事でしょうか。とにかく「アクション映画」はどれだけ燃えるかが最低限のニーズだと思うので。


ただ、振り出しに戻るんですが、ボクも「怒り」に代わるような高次な「動機」は非常に重要だと思います。


「怒り」以外の動機で大好きなものは、「生存」も好きですね。まあ本能的という意味では創意工夫の入る余地が少ないんですが、原始的な動機って個人的にすきなんですよ。「ジョーズ」とか「激突!」とかがまさにそれですが、絶体絶命な状況が好きなのと対かも知れないです。

あと「友情」と「努力」も大好きです。ジャンプ・チルドレンとしては。ははは。あと「かっこつける」っていう動機も実は大好きです。「動機」というよりも「美学」ですかね。何もしなくても他の連中より優れいているにも関わらず、「かっこつけるため」だけに発電所に閉じこもって特訓したりする動機は最高ですね。あれは「勝つ」のが目的じゃなく「いかにかっこよく勝つ」かが目的だから素晴らしいのかもしれませんね。


「目的」も重要な要素ですけど、それはまた別の機会に。

*1:黒澤明の映画の「動機」って殆ど怒りじゃないですよね。義侠心というか。もっとレベル高い感じのが殆どで。怒りが動機なのって「悪い奴ほどよく眠る」ぐらいしか思い当たらないなあ。