男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

弓を引くように。

アクション・シークエンスの演出について。

アクション・シークエンスの組み立て方は大体以下のとおりだとします。

○プロット(大雑把にシナリオの段階)

○映像の中でのアクション(カメラ・ワークと画面に写っているものの動き)

○編集(ポスト・プロダクション→音楽もここに含めます)

ボクが好きなアクションは全体的に

「弓をいっぱいに引いて放つ」

と言う力学に似ているものです。

それは上記の三つの部分にそれぞれ当てはまるのですが*1、「編集」についてあれこれ考えている事を書いてみます。

例えば、ドニー・イエンは自分を「ブルース・リーの正当な後継者」であると自認していますが、これが伊達じゃないことは監督作である「ドラゴン危機一髪97」で証明しています。

つまり、編集の段階でアクションのモーションの前に「ため」(=弓を引く)を随所に取り入れている点です。

これはいわゆる「サンドウィッチ演出」と俗に称される


殴る!

顔!

蹴る!

顔!!

と言う感じで、アクションの合間にドニーの「決め顔」が挿入される演出法です。

勿論ドニーもリーもナルシストという点で共通なのもありますが、アクション演出でも重要な効果を上げているのです。

つまり、蹴る前に「顔」を挿入することで、編集に「タメ」が生まれるわけです。

ただ、殴る蹴るだけでは観客の生理をなぞるだけで、それでは試合を見ているだけです。勿論現実のボクシングの試合などは単純に燃えるわけですが、映画は「作り物」なのでそこにプラスアルファを加えなければいけないと思うのです。刺身は綺麗に切らないと料理にならないのと同じ。

それが編集でありシナリオであったりする訳ですが、この「顔」に限らず「タメ」を入れ込むアクション演出が好きです。

例えばセルジオ・レオーネの顔面のアップや手のアップなどを何度も繰り返しながらドンドン「アップ」になっていく編集などは最たるもので、「弓が切れちゃうんじゃないか?」と心配になるほどタメますよね。

例えばガンダムのアクションで「ビーム・サーベルを抜く」と言うアクションがあります。これは「バックパックからサーベルを引き抜くアップ」が入るから盛り上がるんです。ただサーベルを抜くだけじゃ盛り上がらないわけです。(もっと具体的に言うと、突然アップを挿入することで観客の視線を強制的に注視状態にする事です。これが緩急を生み出す。)

ジョン・ウーが全盛期に見せた銃撃戦はスローがそのタメとして機能していたんですね(全部スローになってからは駄目)。銃撃戦で大事なのは連射する際のリズムとその前のタメです。ブラックハイマー作品なんかの銃撃戦がただ撃ちまくるだけで全然盛り上がらないのはこの「タメ」がないからだと思います。(具体的に言うと突然スローを挿入する事で、生理のリズムを狂わせて、ノーマルスピードに戻ったときのリズムを早く錯覚させる事です。)

天空の城ラピュタ」のフラップター・アクションもドーラが気絶して垂直落下する機体の中で、必死に操縦桿を引くパズーのショットと近づいてくる水面の「タメ」があるからこそ、水柱を立てて機体が持ち直してからの怒涛のような引き画が盛り上がる訳です。(具体的に言うと対象に寄り添っていたカメラのカットバックが、突然ロングに切り替わることで観客に開放感を一瞬与えることです。←アップの使い方の逆。)

どれもこれも観客の生理を興奮状態に導くテクニックが使われているから燃えるわけです。勿論プロットも燃えるからなのは言うまでもないんですがそれをより良くするために演出があり、頭一つ飛びぬけるアクションはそういうテクニックが駆使されていると思うのです。

スピルバーグなんかは全盛期にこういったスキルが非常に高かったので、燃える演出が巧かった訳ですね。(望遠レンズと広角レンズの効果の違いを知り尽くしているからこそ「激突!」や「ジョーズ」の演出が成功しているんだと思います)


最近そういう事で燃えるアクションがあんまりないなあというボヤキです。

*1:「プロット」だと何でアクションするのかという動機やそこへ持って行くまでの焦らし方などなど。