特選現代恐怖映画
ボクが独断と偏見で選んだ「恐怖」を感じることの出来る映画を紹介します。
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2002/11/21
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黒澤明監督はとにかく観客の感情操作がとにべらぼうに巧い人ですが、この映画では随所に極めて現代的な「観てはいけないものを観てしまった感覚」を披露してくれます。カット変わりでギクリとさせる古典的手法も見事なのですが、簾や着物などの遮蔽物にトラックアップすることで、向こう側をジラす手法は凄い恐怖感。
今回選んだ「恐怖」とは質が違うのですが、ホンモノの矢を使ったクライマックスは、矢の降り注ぐ音響効果や矢の突き刺さる怒涛のリズムなども含めて「プライベート・ライアン」のノルマンディ上陸戦シークエンスに匹敵する恐怖を味わえます。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 1998/08/22
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スペシャル・エディション発売中止も記憶に新しい傑作。映画そのものを観る行為が「観てはいけないものを観ている」感覚に観客を陥らせる史上例のない映画。
ただ、一番重要なのは的確な演出に基づいている点。監督のトビー・フーパーのその後の作品を観ると、監督の力量というよりも「何かが降りてる」としか考えられないのがある意味かわいそうなのですが、映像や音楽や編集が物の見事に「観客の生理」を逆撫でる事に成功しており、見直せば見直すほど感心できる。
こういった低予算のホラー映画だと連想される「雑なカメラワーク」が一切なく、レールをキチンとひいた移動撮影や、広角レンズや望遠レンズの的確な使い分け、絶妙の構図などなどの技術的な部分も見逃せないポイントです。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 1999/09/10
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キューブリックの映画は「2001年宇宙の旅」のハルの叛乱シークエンスでも恐怖演出が冴えていましたが、「シャイニング」では正面きって恐怖映画に取り組んでいます。
この映画も全編緊張感たぎりまくりで、「観ちゃいけないものを観てしまった感覚」が随所に出てきます。
特に必見はクライマックスでウェンディがホテル内を逃げ回るシーンの、廊下の奥の部屋にいる着ぐるみと戯れる紳士を見つけるショット。引きの画で捉えられた廊下の奥の部屋はドアが開け放たれており、着ぐるみがなにやらゴソゴソしているんだけど、入り口で断ち切られて全く何をしているのか分からない。するとフと動きが止んで着ぐるみと紳士がベッドから身体を起こして入り口から姿を覗かせる。ここまで引き画なのが恐ろしく怖いのですが、ガッ!っとズームで寄ると、この世のものとは思えない程怖い造詣の着ぐるみの顔が! 見えたと思った瞬間にはカットが変わるので、観客の脳に「観ちゃいけないものを観てしまった感覚」だけが刷り込まれる。
ここで、現代恐怖映画を語る上で非常に重要な人物である小中千昭が登場するのですが、彼の書いた
ホラー映画の魅力―ファンダメンタル・ホラー宣言 (岩波アクティブ新書)
- 作者: 小中千昭
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/09/06
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こちらが必読です。
「観てはいけないものを観てしまった感覚」に対する研究が的確に語られています。
- 出版社/メーカー: ジャパンホームビデオ
- 発売日: 1996/03/22
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そして、その小中千昭が脚本を書いて盟友鶴田法男と組んだ作品群の中でも特筆すべき作品が含まれているのがこちらです。
全5話のオムニバスで、今となっては誰がその存在を知っているのか分からないギリギリ・ガールズというタレント集団のそれぞれが出演している訳ですが、その第5話目がソレです。
どうしようもなくつまらなそうなビデオドラマ(本当につまらなそうなので、大爆笑注意!)の編集を夜中に一人でやる羽目になった女性編集者が味わう恐怖譚です。
あるカットに赤い服を着た女性が見切れていて、不審に思う女性編集者ですが、それは見直すたびにカメラに近づいてきて…
クライマックスの衝撃はとにかく凄くて、ぜひ夜中に一人でヘッドフォンで観てみてください。そのタイミングの見事さは他に例がありません。黒沢清監督のテレビ版「学校の怪談」の一編「トイレの花子さん」も同様のアプローチでかなりの衝撃が味わえますが、こちらはもっとなにかこう凄いんです。タメとかが。
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 1999/11/25
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脚本の高橋洋と、望んでもいないのに恐怖を演出する業を背負わされた中田秀夫監督が初めて組み、見事に現代の恐怖映画史を切り開いた作品。
勿論高橋洋が指摘するように、クライマックスでの演出はそれまでの恐怖演出に徹しきれていないのが残念だが、「幽霊の描写」は鶴田法男の演出法とも若干異なり、ピントのボケ方で表現されている。監督本人が言っていたのですが、カメラテストで「どのボケ方が効果的か」を何パターンも試したそうです。
もう一つ特筆すべきなのは、中篇といえどもこの手の「幽霊物」のジャンルを完全なフィクションで(フェイクドキュメンタリーでもなく)完成させている点です。後の「リング」で到達点を迎える「ストーリー」の部分でもキチンと観客の興味を引っ張り続けられることを証明したのは大きいです。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
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「女優霊」で試されたフィクションとしての現代的恐怖演出が、見事に長編として完成されたのがいわずと知れたこの傑作。原作の着想も素晴らしいのですが、この作品では高橋洋の脚本や、中田秀夫の演出のプラスアフラが凄まじくて、この二人のテンションが最大限に高まっているのが画面からひしひしと伝わってきます。加えて押井守組の川井憲次まで巻き込まれるように極まった音楽を作り上げて問答無用の恐怖世界を形成してます。
注目の恐怖ポイントは
○呪いのビデオ
地獄そのものを描写させた映像を踏まえて、キチンと謎解きの布石を散りばめるのが凄くて、どのショットも井戸の滑車が軋む不愉快極まる音響効果と共に観客に文字通り「呪い」を感じさせる。ハリウッド版「ザ・リング」やテレビ版などの同ビデオと比較すれば、いかにこのビデオが際立っているかが分かるはず。
って書いていた矢先に洗い物中に大根おろしで親指の皮を削いでしまいました!ばちが当たった?
続きは今度。