男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ドーン・オブ・ザ・デッド

http://www.zombie-nation.net/dotd10.html
アメリカでは宣伝として、くだんの冒頭10分をノーカットで放送するという凄いことをしていました。こちらでそれを観られます(字幕無いですけど)。日本では都市部の巨大ディスプレイを使ってやってましたね。この宣伝が功を奏したのは全米でのヒットで証明されましたが、この10分だけでも強烈な短編のホラーとも思えるほど完成度が高いですね。

承前


というわけで、モールに新たなメンバーが増員されたところまで書いたわけですが、当日の劇場の様子なんかを。

雨の振る平日の水曜日にシネコンで観たわけですが、もっとも集客率の悪そうな条件がそろっているにも関わらず、劇場には観客が思っていたよりも居ました。まあ、3割ほどの入りですが、一桁を予想していたので二桁は確実に居たので驚きました。

そんな中に二つのグループが。

中央ブロック最前列の中央(前を通路があるので頭が邪魔にならない、映画ファンにとっては一番視聴覚効果が堪能できる位置)には、筋金入りと思しき二人組み。30代前半で太っていてメガネで襟シャツにジーパンという、完璧な装備です。あえて初日などの混み合うのは避けているのでしょう。

で、その二人組みをあざ笑うかのように、その二列を挟んだ後方に、水曜日のレディスデイを利用したとおぼしき女子学生二人組みと友達とおぼしき男性陣。
デイ・アフター・トゥモロー」の予告にも一挙一動反応をみせる絶品の一般ぶり。ボソボソとキャッキャとおしゃべりに余念のないそのグループと、筋金入りグループの間には、一方的な殺人電波が放出しまくっており、ボクにはそれがひしひしと感じられました(ボクは通路沿いが好きなので、ちょうど二つのグループの真ん中に当たる列の端にいました)。

もちろんボクも、映画の最中(特にこういったシリアスな視聴環境が要求される場合)におしゃべりはたまったもんじゃないのですが、そこで怒ったりして気分を害すると自分自身の映画に対する集中度に影響が出るので、気持ちのコントロールをかなり身につけています(もちろんひどいと注意しますけど)。

そして、お約束の「映画館で出会って…」云々の阿呆らしいCMを経る事で、おしゃべりグループのキャッキャに拍車がかかりつつ本編へ。なんせ、「ドーン・オブ・ザ・デッド」という東宝東和お約束のタイトル・ロゴの登場からして、プーとか吹いてるしまつ。

笑うところじゃないのに。

この心理状態を経験で考察すると、グループで集まると「沈黙恐怖症」に陥るんだと思うんですよ。まあみんなで騒いでいるときに、話題がなくなったり「天使が通ったり」すると気まずくて笑いが起きる感じです。
ボクは常々思うんですが、ホラー映画をみんなでワイのワイの観るアメリカンな風習って信じられないんですよね。映画ってジャンルによってチャンネルを切り替えるべきじゃないですか。心構えというか。ホラー映画って言う大きな枠でとらえれば、当然そういうパーティー・ムービー向けだったり、そういう用途でも楽しく観られる作品もあると思うのですが、本当に怖い映画っていうのは黙って部屋を暗くして(できれば一人で)観るものだと思うわけです。だって、怖がるのが目的の映画なんだから、その怖がることを恥ずかしがって照れ隠しのように騒ぐなんて言語道断。
もっとも、ごく稀にそういった場を凍りつかせてしまうような問答無用の本物の恐怖映画もあると思いますが。それにしたって、見る側にもいくらかの礼儀が必要だと思いますよ。(同様にアダルトビデオをみんなで集まって見ていた高校生の友人連中も信じられない。いろんな意味で。用途台無しだろうが!)
そう考えるとホラー映画に映画館という環境は非常にマッチしていると言えます。
予断ですが、一番痛快だったのはやはり中田秀夫「リング」と「らせん」の同時上映でしたね。あれだけ問答無用に劇場が恐怖に包まれたのを体感できたのはうれしかったです(ボクもびびりまくりでしたけど)。「悲鳴」はショック演出でいくらでもあげさせられますが(勿論かなりのテクニックが要りますが)、「どよめき」なんてそうそう起こりませんよ。映画を観ていて。あれだけ劇場の観客が一体になったのは感動的でした。(「ダイ・ハード2」の脱出シーンも凄かったです)

思うにコメディは恥ずかしくないんでしょうね。気持ちを映画にゆだねることに対して。「恐怖」に対してはやはり何かの照れが生じるようです。「怖がる」=弱みを見せてしまうことに対する本能的なものなのかな…(そこんところは研究の余地ありですか)

まあ、話がずれまくりましたが、とにかくキャッキャ・グループは典型的に「怖がること」に対しての免疫がない集団ですが、くだんの冒頭での反応の推移が非常に興味深かったのです。

まず、救急車からだらっと出ている足のショットで、ちょっとキャッキャ騒ぐのですが、よくあるこけおどしにも関わらずあのショットは妙な不気味さが漂っていてかなり効果的だったようで、少し息を呑むのが伝わる。案の定それがただサボっている緊急隊員だったと分かると、またうれしそうなキャッキャ。
ところが、いよいよヴィヴィアン・ゾンビ登場のくだりになると、一気に様子がおかしくなる。最初こそ無理やりに
「ほら……開くよ……」
とか
「いる…いる……」
などと呟いていたのですが、
ギャーンと登場→噛み付き→旦那がアナに襲い掛かるを経て、バス・ルームでの沈黙と旦那ゾンビのドア破りのあたりではまったくキャッキャせずに息を呑んでました。

もう、ザック・スナイダー監督としては「してやったり」じゃないでしょうかね。彼は「シリアスな恐怖を目指す」アプローチを試みた、分かってる奴らしいので。

ちなみに彼女たちはエンド・クレジットの最後までちゃんと観て、場内が明るくなると力無く

「キモイ……」
「こええよ……」

と、ベリーマッチな反応をしていたので、前の筋金コンビも溜飲を下げたことでしょう。


映画の感想の続きはまた明日。