男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

死者の夜明け〜ドーン・オブ・ザ・デッド〜竹書房文庫

竹書房はノベライズにしても『「超」怖い話』シリーズの復活や『東京伝説』シリーズの復活などなど、その手のジャンルを一手に引き受けているような印象すらあり、好感度大です。

さて、映画の感想を眠いとか書いて途中なのですが、今日は今日読んだノベライズについて。(早く書かないと忘れるので)


ジェームズ・ガンの初期シナリオを基にして、入間眞という方が翻訳とともにノベライズも手がけているようです。

彼のノベライゼイションは非常に良いのではないでしょうか。映画ファンの知識をくすぐる表現などなどを使って、状況描写を非常に写実的に表現しています。あとがきでのノベライズの魅力について書かれている点も興味深く、「初期シナリオからカットされたシークエンスが読める」のは個人的にも共感できました。このノベライズでも同様で、ジェームズ・ガンのアプローチがボクの思ったとおり「ショッピング・モールでの篭城を踏まえた上で、冒険活劇としてのアプローチに比重を置く」事がハッキリと感じられました。映画でも美味しいところを持っていく警備隊長のCJは、さらに熱い漢になっていたり、ユーモアの処理も非常に面白いです。

○相違点の面白さ

カットされたシーンだけではなく、映画で変更された箇所も興味深く。例えば、夫婦とその子供のシークエンスは大きい。映画では、黒人の旦那は奥さんも子供もゾンビと化していうという現実から逃避している感じで腑抜けになってしまっていますが、小説では自分の罪(色々とした悪事)への贖罪を家族というものへの妄信的な愛情に転嫁させた結果気が狂ってしまっています。この気が狂った感じがノベライズでは絶妙で怖いです。

伏線もちょっと見え見えですがキチンと張られているので、映画では唐突だった部分がスムーズです。まずアンディ銃砲店へ救出へ行く地下水道の存在が地下駐車場へ行く際に示唆されます。また、アンディ銃砲店から脱出する際にプロパン爆弾を始めて使用するので脱出するさいの説得力につながる。(映画版だとどう考えても無理っぽいのでいつの間にか何とかなっているのがちょっと…)まあ、プロパン爆弾はバス脱出の際に始めて画面に登場したほうがインパクトはありますけどね。

○ディティー

ディティールに関してはDVDで復活する25分に入っている可能性が高いので期待できますが、ボクが特に好きなのはクライマックスで脱出するバスにコロンブスが大航海に使った船の名前を名づけているところです。ボクが単純に道具に名前をつけたりする設定が大好きなのもありますが、これによってこのリメイク版がオリジナルとは違って、主人公アナの通過儀礼として「ショッピング・モールの篭城」を扱っていることが分かるからです。いつまでもモールに居座って、仕方なく逃げ出すオリジナルの主人公たちとは根本的に物語での役割が違っている事が強調されていると思うのです。アナはハッキリと「こんなところでは死にたくない」(ノベライズにはこのせりふはないけど)言い切りますからね。「冒険活劇」の代表的なプロットは《主人公が困難を克服して次のステップへ進む》であり、これはボクの大好きなプロットのひとつです。

○ラスト

映画版のラストは観ていてもモロにわかるほどとってつけたような処理ですし、あまりにも適当で安直な「ただ後味を悪くしたい」という感じなのでボクはまったく否定しているのですが、初期シナリオでは当然のようにありませんでした。ふ〜。

やっぱり暗黒の夜明けに「生きている」というそれだけのわずかな希望を抱いて旅立っていくのが「ドーン・オブ・ザ・デッド」のラストに相応しいと思うんですよ。

○マイケル

ノベライズ版でもやはり実質的な主人公マイケルが大活躍してくれてすばらしいです。ボクがなぜしつこいほどマイケルがすばらしいと絶賛しているかというと、彼はこういうジャンルの映画ではあまり例を見ないタイプのヒーローであり、彼がキチンと活躍して効果的に機能している点がすばらしいからです。繰り返しになりますが、彼は「足手まとい」タイプの典型なのに、セールスマンという仕事で培ったコミニケーション・スキルを武器にして、集団を統率し、状況を打破し、しかも悲しみを克服して前向きにがんばる(トラウマなんてくそ食らえだ)。このキャラクターを生み出しただけでもジェームズ・ガンの仕事に賛辞を送りたいですね。
CJに対しての接し方や話術で心理操作で状況打破していく件は映画にはないだけにポイント高いです。

まあ、これに関してもボクがこの作品を評価する結論として、映画のほうの感想の続きに書きます。


何はともあれ、後でも先でもノベライズ版も必読です。