男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

久しぶりに中原俊監督じんのひろあき脚本の『櫻の園』を観ました。

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テクニックではなく心情が心に響くようになった

今もそんなに変わらないとはいえ、若い頃はとにかく「テクニック偏重」の傾向が非常に強くて、極端な話「人間なんて描く必要まったくなし」(今でもちょっとは思ってるけど)とまで断言していたぐらいです。

今でもよく書いているように、どんな作品でも「物語る」行為そのものこそ評価すべきで、「物語(ストーリー)」に対する評価はまったく区別スべしとは思うんですが、そんなのは所詮理屈でねw

結局「物語(ストーリー)」がいかに大切かも、それを描くために「登場人物を描く」ことがどれだけ大事かも、最近は痛切に実感できている次第です。「物語る」行為とイーブンで、やっぱり「物語」も(当たり前だけど)すごく大事なんですよね。


で、


先日日本映画専門チャンネルで、中原俊監督、じんのひろあき脚本による名作『櫻の園』がハイビジョンで放送されたのを久しぶりに観直したんですよ。したらまあ、彼女たちの心の機微が胸に響く響くw


公開時、ボクは学生で映画を勉強していたド真っ最中でしから、当然「テクニック偏重」な見方で評価をしていたんですよ。その点でも恐ろしく素晴らしい映画でして、大好きな「隙間の時間」や「事の前の時間」などをリアルタイムで描くという手法だけでもヨダレがズビズバもののごちそうでした。そこにきて個人的な嗜好である「百合」も絡んできちゃいますからね。たまらんですよ!(これは余計ですけどねw)


そんなので、ちょこちょことこの映画の「時間の飛躍」に関する演出が若いころ大変気になっていたんです。

具体的に言うと、「リアルタイム」のはずなのに「時間が飛躍する編集」が時折入ってくるんですね。例えば、部長の清水さんとつみきみほ演じる杉山さんが屋上で準備運動をした後に、そのままカットが変わって休んでいるシーンになる。「リアルタイム」性を大事にするなら、そこは1シーンでも別の場所のシーンを挟むのがセオリーですよ。そうすれば「時間の省略」は観客に違和感を与えない。

ところが、サラっとそういう演出が入ってくるんですよ。

要するに中原俊は「一日のドラマ」のような「時間感覚」で編集演出していることが分かるんですね。

若い頃は、どうもそれが「引っかかって」いたんですが、改めて観るとそれは「彼女たちの時間が通常の時間とは違っている」事を見事に表現していると合点がいきました。
観ている時に感じる「本当にあと1時間ちょっとで舞台の本番が始まるんだろうか?」と不思議な気持ちになるほど、やんわり、ふんわりと時間が過ぎていくように感じる。

これは「学生の体感時間」とでもいいましょうか。振り返れば分かるように、脳みそが常に新しい情報をインプットし続ける若い時期は、当然体感時間が大人のソレとは違って、桁違いに長いんですよね。同じルーチンを繰り返す時間感覚とは全く異なる次元だといえます。

中原俊監督が意図的にそれをやっていたかはどうでもよくて(完成した作品は我々のものだから)、絶妙にあの「若者の時間感覚」を体感させてくれる素晴らしいテクニックに惚れなおしましたね。


で、話は前後するんですが、先の部長の清水さん、彼女に仄かな恋心を抱いている杉山さん、そして、清水さんが大好きな倉田さん。この三角関係がとにかく胸にグサグサ突き刺さるんですよね。またそれを踏まえた上での三人の芝居が本当に見事で、ちょっとしたことで表情がちょこっと変わるんですよ。それをことさら強調などしないんですが、それと分かって観ていると、見事に心情の変化がスムーズに伝わってきます。また、それほど画質が良くなったわけでもないんですが、やはりハイビジョンになると画面の情報量が桁違いに多くなるので、涙ぐんでいる目とかがキチンと分かるんですよ。


特にラスト付近の「写真撮影」のシークエンスね!!


こんな見事なラブシーンはめったにお目にかかれないと思うほど感動しちゃいましたよ。そして、つみきみほ演じる杉山さんが切ない……


ビューティフル・ドリーマー』も本番の文化祭が延々とこない日々を描いていますし、この映画も「本番」が始まる瞬間に映画は幕を閉じる。言うまでもなく学生という「モラトリアム」な時間を映画という世界に固着させているわけですけれども、「学生時代を振り返ると授業のことはまるで覚えていない」という言葉通り、「青春映画」ってのは「授業以外」の時間ばっかり描いていますよねw

「授業」だけで構成された青春映画ってのに誰か挑戦してたりしないのかしら。