『ヒッチコック』★★★
ジョハンソンがまたしても儲け役
劇場でも見逃し、ブルーレイが出てもなんとなく観ていなかったアンソニー・ホプキンスの『ヒッチコック』をWOWOWで放送されたので観ました。
結論から言うと非常に楽しんでしまいました。
原作となっている『メイキング・オブ・サイコ』も読んでいるし、『サイコ』自体も初めて観たヒッチコックの映画であり一番好きな映画でもあるような題材なので、もちろん色々と「こうしたらいいのになあ」という意見もなくはないんですが。
アンソニー・ホプキンスの「あんまり似ていないメイク」や、奥さんのアルマとのドラマがメインとなっているなどの事前情報からハードルがけっこう下がっていたというのを差し引いても、予想通りジャネット・リーを演じたスカーレット・ジョハンソンが(出番は少ないとはいえ)かなりの儲け役だったり、ちゃんとバーナード・ハーマンが1カットだけ登場して「彼の音楽のおかげでサイコが傑作になった」ことについても言及してあるのは嬉しかったです。
また、似てないと思っていたアンソニー・ホプキンスですが、観始めると一瞬でヒッチコックに見えてしまうあたりが恐ろしいw
アンソニー・パーキンスを演じたジェームズ・ダーシーという人も、引き絵でソファに座っている登場シーンからいきなりパーキンス(というよりもノーマン)に見えるあたりが素晴らしかった。彼のアイデアと言われる「鳥のようにお菓子を食べる」に関しても、パーキンスが持っていたお菓子を小道具として登場させるという、なかなか粋な配慮。
ヴェラ・マイルズを演じるジェシカ・ビールは笑っちゃうほど似ても似つかないんですが、ジェシカ・ビールのお芝居でこの映画の一つのテーマともなっている「ヒッチコックの女性不信」に関しての重要なキーパーソンになっている。
そして、その「女性不信」を踏まえた上で、ヒッチコックとブロンド女優との関係で唯一と言っていいほど良好な関係だったと言われるジャネット・リーを演じるスカーレット・ジョハンソンが非常に良かったです。終盤でヒッチコックの頬にキスするシーンなんてジーンときましたもの。
『エド・ウッド』と同様映画の初日で幕になる構成はオーソドックスですが、あの有名なシャワーシーンの部分で、ヒッチコックがロビーで音だけ聞いて(あの音楽と観客の絶叫)悦に入るシーンは素直に微笑ましい。そりゃ、あんな映画史に残るようなシーンを作ったらあんな気分にもなるだろうというw
98分という短いランニングタイムも含めて『サイコ』を作っている最中のヒッチコックに絞った構成は実に上手くいっているのではないでしょうか。まあ、だったらなおのこと『ヒッチコック』ってタイトルは微妙に的はずれなんですけどね。