男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム14『ザ・タウン』★★★1/2

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監督三作目となる『ARGO』の評判が降って湧いたように絶賛だらけだったので、未見だったベン・アフレック監督作品『ゴーン・ベイビー・ゴーン』と『ザ・タウン』をブルーレイでレンタルしてきました。実は監督デビュー作である『ゴーン・ベイビー・ゴーン』の時から良い評判は多く聞いていたんですよね。そして、今作『ザ・タウン』も非常に評判が良かったのですが、結局劇場には行かず仕舞い。

まずベン・アフレックには謝らないといけません。

アカデミー賞脚本賞マット・デイモンと一緒に受賞した時も勝手にバーター扱いしてしまっており、役者としても特に際立った映画に出演しているわけでもなかったので、随分と過小評価していました。

監督と脚色を担当しているこの作品を観れば、ベン・アフレックの力量は一目瞭然。

実に手堅く無駄のない的確な演出と、ここぞという場面でキチンと盛り上げる活劇演出には目を見張りました。

もちろんマイケル・マンの傑作『ヒート』への愛は、劇中でもベン・アフレックがテレビで観ているぐらいだから明白なんですが、原作も含めて「わかったわかった、お前らどんだけ『ヒート』好きなんだよ!」と。ノーランといい現代のアクション映画は常に『ヒート』の影響下にあるのでしょうか。いや、僕も大好きだから別にいいんですけどね。

ポール・トーマス・アンダーソンの映画を支えているロバート・エルスウィットの撮影は茶系等の色調で統一しつつ、強盗シーンや銃撃シーンなどでは重心の低い硬質なカメラワークで魅せてくれる。


中盤のカーチェイスシーンなどは、飽きるほどよくあるシチュエーションのアクションなのに、絶妙な演出とスタントプランが見事に決まり、久々に息を呑む迫力を味わえる。


疾走するパトカーの後部から鳩が飛び去るという、偶然なのか意図的なのか判別できない素晴らしいショット。


手際よく人質全員の携帯電話を集めて水で使用不可能にするなど、合計三回描かれる強盗シークエンスはどれも趣向を凝らし、その手際も入念に細かく描かれる。

こういったプロらしい手際の良さをスピーディーに描く手法も『ヒート』と同様だが、こちらはデ・ニーロ達とは違って幼馴染たちによる犯罪らしく威勢の良さが特徴か。


この作品で一番の儲け役は、幼馴染のひとりジェムを演じたジェレミー・レナー。近年の「どの映画にも出てる役者」の椅子に座り込んだ売れっ子になっている。「理由は訊かずにぶちのめすのを手伝ってくれ」というナイスな頼みを、「どっちの車で行く」と軽く引き受けるタフなキャラを好演している。ベン・アフレックの恋人にアヤをつけた麻薬ディーラー二人組みをぶちのめすくだりは白眉で、ボゴボゴにした挙句にハンマーで手を砕いて、足を銃で撃ちまくる。『グッドフェローズ』のジョー・ペシとまではいかないけど、「手がつけられない感」はなかなかのもの。


中でも傑作なのは銃撃戦の末に追い詰められたレナーが、地面に落ちたジュースを飲むシーン。これは素晴らしく印象に残る。『パルプ・フィクション』のサミュエル・L・ジャクソンに匹敵するストロー飲みだろう。

即興のようにも思えるシーンだが、どちらにしろ傑作シーンだ。


終盤の強盗シークエンスでの静寂演出も実に見事。リアから聞こえるかすかな鳩の羽音が絶品の効果。

金を奪って周りの目を盗みながら慎重に車に進んでいくシーンのカットの積み重ね方や、駐車場の車についてからの「静か過ぎる」効果を絶妙のドリーカメラで捉えていくシーンなど、どれもピタっとハマって緊張感が冴える。そこから一気に雪崩れ込む大銃撃戦へのつなぎ方も狙い通りの盛り上がり方だ。


キャストでは惜しくも亡くなってしまったピート・ポスルスウェイトが憎ったらしい元締めを絶品の抑えた憎たらしさで演じているし、ベン・アフレックの父親役を演じるクリス・クーパーも1シーンだけとはいえ強く印象に残る。

『ヒート』でいうところのアル・パチーノにあたるのがジョン・ハム。飄々としつつも悪を憎みまくっているFBI捜査官を巧く演じている。ベン・アフレックとヒロインとの不思議な三角関係も面白い。


『ヒート』同様、悪の道から足を洗おうとする理由が女性絡みなのだが、その女性が銀行強盗の人質だったというのもセンチメンタルだが工夫のある設定。


中でもデートしているところをジェレミー・レナーに見つかってしまって、緊張感のある団欒に突入するシーンはヒッチコックばりのマクガフィンの使い方で唸らされる。



監督二作目にはその監督の力量が叩き込まれるというのが僕の持論ですが、そういう意味でもベン・アフレックはかなりの本物感です。

これは三作目の『ARGO』が期待できますね。

・・・

今回はエクステンデッド・バージョンを観たので150分だったのですが、劇場公開版はなんと125分だったようです。25分も長くなっているとは思ってなかったので、どんな風に編集されているのか気になるところ。ベン・アフレックの音声解説と合わせてもう一度観てみようと思います。


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