男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『レッド・オクトーバーを追え!』を観ました。


デスクワークが冒険冒険また冒険

ダイ・ハード』で映画史に残る傑作を作ったジョン・マクティアナン監督が次に選んだ作品はトム・クランシーのベストセラー小説である『レッド・オクトーバーを追え!』でした。原作をすでに読んでいたので、「マクティアナンならやってくれる!」と信じて期待に胸を膨らませて観に行きました。

巧みに取捨選択されたラリー・ファーガソンの脚本(彼は潜水艦ダラスの副艦長として出演もしている)が大変素晴らしく、シミュレーション系のハシリとされる原作をジャック・ライアンの冒険物としてまとめた手腕は立派。情報アナリスト(分析官)という当時のアクション映画としては異色の職業であるライアンを、徐々に徐々に大事に巻き込まれていく展開を、「じゃあ、君が行け」「何をしている? 行け」という具合にどんどん現場へ近づけていく舞台転換が秀逸。ライアン自身も「二度とごめんだ」と自虐的にぼやいて感情移入を促す。ここは前作『ダイ・ハード』と同様のテクニック。舞台や設定やストーリーは違えど、冒険物としての本質である「ロマン」を充満させた作品として、この二作が他のアクション映画とは一線を画している部分だ。

ダイ・ハード』でも組んだ撮影のヤン・デ・ボンが続投し、『ダイ・ハード』とはまた違ったミリタリー調のルックスや寒々とした海洋などの表現をキッチリ作り上げている。大好きなベイジル・ポリュデュリスの音楽も、ロシア風のコーラスを巧みに盛り込んだ傑作。冒頭のタイトルバックの盛り上がりは出色の出来。

男だらけの戦争ごっこの側面を大いに盛り上げる、いい顔揃いの男優陣も素晴らしい。ショーン・コネリーは元々ゲスト出演だったのだが代理で急きょ主演に。しかし、代表作の一つといっていいほどのハマリ役であり、彼の渋さが実に効果的に映画を盛り上げている。端的に言うと「華がある」んだよね。
ジャック・ライアンは当時数多くいた「第二のトム・クルーズ」の一人アレック・ボールドウィン。この映画で的確にデスクワークなのに巻き込まれてしまうインテリを見事に演じている。続編ではハリソン・フォードに持っていかれてしまった形になったが、フォード版の二作は凡作だったので結果的に彼のフィルモグラフィーとしては良かったのかも。
ソ連の潜水艦艦長として今や押しも押されぬスターになったスウェーデンステラン・スカルスガルドの若き日の姿も(と言ってもこの時すでに四十代ですが)。
今はなきリチャード・ジョーダンも大統領補佐官をひょうひょうと演じていて最高です。

ヤン・デ・ボンは監督するさいに「編集でストーリーを物語る事をマクティアナンから学んだ」と言っていましたが、二人が組んだこの二作でマクティアナンは果たして上質の「編集」によるストーリーテリングを見せてくれます。編集の一人ジョン・ライトはその後のマクティアナン作品や、ヤン・デ・ボンのデビュー作『スピード』で彼をサポートしている。

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ブルーレイは特にリマスタリングなどは行われていないようだが、海洋の寒々とした風景や潜水艦内の様々な人工照明の色彩を色濃く再現している。解像度に偏らずフィルムライクなルックスで時折ザラザラした映像も散見されるが、上映時もこういった感じだったのでOK。LDやDVDとはかなり違う雰囲気だが、ハイビジョンらしさがよく出た高画質だろう。HDオーディオも分離感にすぐれ、潜水艦内の密閉した音場や、海中のノイズなどもリアにキチンと回りこんで効果的。



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このサントラ抜きでは語れない傑作。誰でもメイン・テーマは聴いたことがあるはず。

一気にテンションが上がる名タイトルバック。