『マタンゴ』★★★を観ました
漂流モノとして観ても面白い
日本映画専門チャンネルでハイビジョン放送されたものをやっと観ました。ハイビジョンのクオリティとしてはそこそこですが、島のジメジメ感や極彩色の船内などの色ノリは上々。
子供の時は「漂流モノ」として観ていた記憶があり、マタンゴが実際に登場する終盤(本当に最後の10分ぐらいしか大々的には登場しないんですよね)には心底震え上がった記憶があります。
今回観直すと、やはりヨットで無人島に漂着した男女の(露骨なぐらい)ドロドロのいがみ合いがメインであることが分かります。特に食料を巡るイザコザがメインに据えられているんですが、今観るとそれほどお腹が空いているように見えないのがちょっと残念でした。
もっとも、やはりマタンゴを巡る焦らしに焦らしたホラー要素が素晴らしくて、特にメインの舞台になる漂着した「スパイ船」に対するアプローチが素晴らしい。小出しに開示される謎、放射能による実験、残されている食料、国籍が意図的にわからなくしてある、外された鏡(!)、カビだらけの船内美術などなど、観ていてワクワクブルブルする。
この映画のキモはやはりマタンゴに対する明確な解答を明示していないことでしょう。上記の情報から観客が想像するしかないところへ、徐々に変貌した人間だけかと思わせておいてのキノコそのものが蠢くクライマックスは生理的な恐怖が凄まじい。
また、ミイラ男からの流れなのでしょうが、ズルズルヒタヒタと忍び寄る感じとか、船室のドアを開けてチェーンロックを外そうとするボロボロの手、そして取り囲まれてドアを破壊して侵入しようとするシーンなどにゾンビ物への源流を感じさせる。
ラストの鬱展開もホラー映画としては満点で、心底観ている人間をイヤな気持ちにさせてくれる。
しかし、同時上映『ハワイの若大将』ってあたりに当時のおおらかさが端的に現れていて、そっちのほうが興味深かったりもします。