男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ミッション:8ミニッツ』★★★1/2

謎また謎のサスペンスの果てに……

(ネタバレが含まれます)

月に囚われた男』に続いてダンカン・ジョーンズ監督がまたしても藤子・F・不二雄イズムにあふれた傑作を作ってくれました。

主人公であるスティーブンスはアフガンでの戦闘中に撃墜されたと思っていたが、気がつくとシカゴ行きの列車で意識を取り戻す。目の前に座っている女性は親しげに話しかけてくるが見覚えがない。一体どういうことなのかと列車の中を戸惑いながらウロウロしていると、突如列車は大爆発を起こす。すると今度は機械に取り囲まれたポッドの中で意識を取り戻し、自分が列車爆破テロの犯人を見つけ出すために、犠牲者の一人が残した記憶を再構築した擬似世界へ送り込まれていることを知る。

次々から次へと謎が提示され、かなり意表をつかれるストーリーが展開します。序盤、中盤、終盤と何度も列車爆破テロが起きるまでの8分間を繰り返す度に、主人公の行動によって事態が変化していく。ただし、タイムスリップではないので、過去の出来事を改変できないところがポイント。

こう書くとガチガチのハードSFっぽいものを想像しますが、実際にはありがちな「胡蝶の夢」展開に陥ることなく、しっかりと現実と虚構の描き分けがなされている。そこが個人的にかなり気に入ったと同時に、ダンカン・ジョーンズが『月に囚われた男』に続いて信用できると感じたところです。

一方、この手のストーリーなら当然期待する「謎解き」や「犯人探し」「爆弾探し」「爆弾解体」などの定番はごくあっさりと流してしまうところも同監督らしい。勿論こういった部分もあの手この手でサスペンスフルにすることも可能でしょうし、そうしたほうが映画の評価は高まると思うのですが(まあ、巧くいけばの話ですが)、監督はそういうアプローチよりも、むしろ『月に囚われた男』同様のエモーショナルな部分での高揚を優先したようです。

そのアプローチは大きく成功しており、事件が解決してからのラストダイブで展開される感動的な詩めくりでもって、一刻だけで消費される娯楽映画から、観た人たちの記憶に長時間残る名作に昇華されています。

ジェイク・ギレンホールも実に安定した芝居を見せてくれますし、『遠い空の向こうに』の大ファンとしてはお父さんのような感慨深い気持ちで観ていられますw

儲け役は現実世界でスティーブンスとの通信係グッドウィンを演じたヴェラ・ファーミガ。軍人としての毅然とした態度の中にスティーブンスに対する同情と支援を感じさせて素晴らしい。『マイレージ・マイライフ』でも大人の魅力全開でしたが、今回も気品を感じさせる芝居が実に好みでした。

ポール・ハーシュの編集も鉄板の巧みさで、テンポが命とも言えるこの映画の魅力を引き上げています。それでいて終盤はキチンと時間をとってロマン満点に仕上げているのがさすがです。

オリジナルの映画が寂しい中でも、何年かに一本こういう傑作を作り出してくるのがハリウッドの底力なんでしょうかね。


よく比較されているようですが、終盤の「ある意味」予想を裏切る転換はどちらも素晴らしい。名作です。


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ジャック・ショルダー監督の隠れた佳作。同じ一日を繰り返すSF。そういえばファンタスティック映画祭で観たきりだな……


ライトノベルのレーベルですけど、どちらというとジュブナイルという表現がぴったりの傑作。夢中になって読んでしまいました。


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ループ物のブームを作ったといっても過言ではない傑作。


大全集でも2012年2月に発売されます。しかも併録されるのはこれまた超傑作『中年スーパーマン左江内氏』