『アイガー北壁』★★★1/2
重量級の大傑作
WOWOWで放送されていたのを。アイガー北壁は『アイガー・サンクション』や傑作冒険小説『北壁の死闘』で馴染み深いので、「タイトルにもまっているぐらいだから、たくさんアイガー北壁が観られるのかな」というぐらいの、半分観光気分の軽い気持ちで観たのですが、あまりの迫真性あふれる演出や撮影に度肝抜かれて最後まで釘付け。シナリオも、2/3はすべて登攀シークエンスに費やされており、ダレ場なく緊迫感あふれるシーンが続きます。あとで調べてみると実際に起きたエピソードを忠実に映画化していることが分かり、同エピソードを半ドキュメンタリーとして描いた『運命を分けたザイル2』も観てみたい。
有名なアイガー北壁がまだ登頂されていない第二次世界大戦前夜、1936年が舞台になっているのですが、さすがドイツ・オーストリア・スイスが共同制作しているだけあって、やたらとディティールが細かく再現されているのも素晴らしい。なので、登攀に挑むまでの1/3もかなり楽しめます。
全景のショットが挿入するだけで、「あれ登るのかよ!?」という問答無用の迫力を生み出しているアイガー北壁。
観光地の風景としてみれば、「絶景」としてただただ美しい山ですけど、1800メートルも延々絶壁という北壁を登ろうなんて、考えただけで身震いする。実際映像に収められている風景だけでも高所恐怖症を抜きにしても足がすくむ事必至。
手前にあるホテルの展望台から全部丸見えなのも実に効果的で、望遠鏡で登攀の一部始終が観光客に見られるという描写が実に巧みに「対比」として組み込まれています。
そして、延々と続く登攀シーンがとにかく圧巻。巧みな撮影技術と演出によって、実景のアイガー北壁の迫力と、セット撮影の違和感がほぼ感じられない。なので、緊迫感がまことに素晴らしい。凍てつくような吹雪の描写なども強烈で、HD放送によるディティール描写が効果的。DVDしか発売されていませんが、これはブルーレイでも出して欲しい。
傑作です。
言わずと知れた山岳冒険小説の傑作。