『転校生 さよなら あなた』★★1/2
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意外な展開
大林宣彦が自身の代表作であり出世作と言える『転校生』をリメイクすると聞いたときは、「さすが、大林宣彦。おれたちにできないことを平然とやってのける。そこにシビれるあこがれるぅ」という思いと、「今の大林宣彦だったらただじゃ済まない作品にしそうだよなあ」という思いが半々でした。
今回やっと観たのですが、気持ちの悪いことに、そのどちらの期待も裏切らない、「妙な作品」(褒め言葉)に仕上がっていたので驚きました。やっぱり大林宣彦は老いてますます健在です。
ちなみに、どうして今頃観たのかというと、奥さんが友達と観てきた『君に届け』で、チヅを演じていた蓮佛美沙子という女優さんが大変良かったって事で。果たして彼女はさっぱりとした顔つきで清潔感もあってボクもえらく気に入りました。
そして本編。
オリジナルの『転校生』を死ぬほど観た人間には笑ってしまうほど忠実にリメイクしている前半部分と、唐突にガラっと意外な展開に突入する後半とに分かれた「奇妙な映画」でした。
前半部分のトレースぶりは本当に笑ってしまう事が多く、男女が入れ替わったとたんに極端に一夫(一美)は男っぽくなり、一美(一夫)は女々しくなるあたりや、ボクの中でベスト・オブ食いっぷり大賞に値する小林聡美のドカ食いも家族で完全再現(いかんせんこちらはまだまだ小林聡美のアレには及びませんでしたが)。
後半も基本の構造は変わらないのですが、副題になっている「さよなら あなた」が凄く深い意味を持つ展開になっており、かなり異色の作品と化していました。正直『転校生』にはここまでハードなテーマは望んでいないのですが、大林宣彦がわざわざ書き直してまでやろうとしている事は良く分かります。
それにしても、最初から延々と全カット続く「斜め構図」は衝撃というか呆れました(褒め言葉)。よくもまああれだけおじいさんになっても変わらず挑戦的な演出を心がけるもんですよ。しかも、「効果的だろうかそうでなかろうがおかまいなし」なところも相変わらずで安心しました。