男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

厳選映画旨そセレクション


アメリカのサイトで”映画史に残る食事の名シーン13”が発表されたそうです。

まあ、「食事の名シーン」という事なので、そのシーンが映画に対してどれだけ良いシーンかというセレクションなんでしょう。『クレイマー・クレイマー』なんてホントに良いシーンですからね。

が、

個人的には「食事シーン」=「うまそう!」ってのが名シーンだと個人的には思っています。

そこで、長年ボクの中で積もり積もっていた、「映画旨そ名シーン」をセレクションしたいと思います。そもそも味なんて伝わらない映画という媒体で、観客に「旨そう!」と思わせるのは、演出と役者の芝居がもっとも試されるシーンだと思いますよ。

とりあえず、別個にくくらないと不公平になるぐらい、「旨そ」シーンを作り出す超天才宮崎駿の作品から。


ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ (スタジオジブリ絵コンテ全集第2期)
ルパン三世アルバトロスの翼』より、最初のすき焼き

「ビールいれんな」「この方がこくが出るんだよ」
キャンプ用の簡易コンロでグツグツつくる割り下すき焼きですが、雄山なら激怒まちがいなしの「日本人は肉の食べ方を知らん」すき焼き。これがまた強烈に旨そうなんだからどうしようもない。そもそもあのシチュエーションですきやきを食べるシナリオ上の必然性はゼロってのがまた素晴らしい。手榴弾を放り込まれているのに、ちゃんとすき焼きを持って逃げてますしね。


ルパン三世「カリオストロの城」 [Blu-ray]
ルパン三世カリオストロの城』より、とっつぁんが部下と食べているカップヌードル

「上の砲台の泉水です」「つづけ!」
もちろんミートボールスパゲティも外せませんが、あの簡易フォークでズオオオっとすすり上げるとっつぁんにはかなわんでしょう。部下も旨そうに食ってるし。放り出していく時には「もったいない!」とうなること必至。


天空の城ラピュタ [DVD]
天空の城ラピュタ』より、ドーラの食事シーン

「もったいない……」
遂に本編でも「もったいない……」と言わしめた究極の食事シーン。空賊のドーラが縛り付けられたパズーに見せつけるど迫力の食事はもはやSMの境地。ロブスターを真っ二つにして殻ごと丸かじり、フォークで突き刺した馬鹿でかいレア肉を縛ったひもが引きちぎれるのもかまわず丸かじり。この時によだれを垂らしながら肉を見せつけるカットの迫力は他の追従を許さない。その肉を口に放り込んだまま「シータがそういった!? う゛ぁか!!」と咀嚼演技を見事に披露する初井言榮が絶品。目玉焼きをかまずに飲み込むパズーやシータとは格が違う。


ハウルの動く城 [DVD]
ハウルの動く城』より、ベーコンエッグ

久々に宮崎駿がやってくれた強力な旨そシーン。鉄のフライパンに次々と放り込まれる卵も凄ければ、日本人の常識からは考えられない分厚さのベーコンがまた異常。


千と千尋の神隠し』でも「そりゃ、ぶたにもなるよな」とむさぼり食べる千尋の両親のシーンも素晴らしいし、最新作の『崖の上のポニョ』でもラーメンが登場したり、サンドウィッチがまた最高級フランスケーキ!!


続いて実写編


転校生 [DVD]
『転校生』より、小林聡美のどか食い

一夫に入れ替わった一美が自分の家に戻って最初の晩飯。恐らく普段見たこともないごちそうだったのでしょう、段々とペースがあがるガツガツ食いは、小林聡美一世一代の名芝居。前に口に入れた食い物が残っているのにもかまわず次々と別の食べ物を放り込んでいく、あまりにも意地汚い食べ方ですが、これだけ旨そうならOK。兄貴*1たちが喉を鳴らすカットのインサートも大変効果的な演出。


『幸せの黄色いハンカチ』より、出所した高倉健が飲むビール

役作りに熱心に取り組むのも、プロとして当然であるという信念を崩さない。代表的な例として知られるのが、初の松竹映画への出演となった『幸福の黄色いハンカチ』での最初の登場シーンである。刑務所から出所し食堂でビールとラーメンとカツ丼を食べるシーンがあり、その収録で、いかにもおいしそうに食べる、リアリティの高い演技を見せ、1テイクで山田洋次監督からOKが出る。あまりにも見事だったので、問い尋ねると「この撮影の為に2日間何も食べませんでした」と言葉少なく語り、山田監督を唖然とさせた。(wikipedia

幸福の黄色いハンカチ [DVD]
高倉健の旨そさは、単にビールを飲んだときの、ためにためた「プヒュー……」だけではなく、メニューを観るときの顔から、満を持して注文するときの一つ一つ品物の名前を区切る言い方などのテクニックにもある。勿論実際に食べる芝居でも、ラーメンをただ旨そうに食べるだけではなくて、ホントに何年ぶりかに食べるんだという実感がにじみ出てくる素晴らしいシーン。そもそもビールのグラスを持つときの手つきが既に旨そうだもん。



シャイニング [Blu-ray]
『シャイニング』より、我慢に我慢を重ねた末に、つい「まあ幻覚だし」とばかりに一杯やってしまうジャック・ニコルソン

同作では寝起きのジャック・ニコルソンがみせる、「目玉焼きの黄身に何かをつけて食べるシーン」も捨てがたいんですが、やっぱり旨そうっていう意味ではこのシーンに尽きる。ボクはお酒が好きじゃないんですが、映画内の飲酒シーンには格別の思い入れがあるだけに、アレは凄かった。「やっちまった」感も合わせてキューブリックの演出力にも目を見張るが、なんといっても喉越しまで感覚体験させるジャック・ニコルソンはオスカーもんです。それが証拠にお酒を飲んだこともない中学生の時にこの映画を観たボクが、おとなになって遂にウイスキーを飲んだときは何をおいてもこのシーンをお手本にしましたからね。でもウイスキーくそ不味かった!! つまり、これが芝居なのだ!


続 夕陽のガンマン [Blu-ray]
『続・夕陽のガンマン』より、イーライ・ウォラックがリンチされる前に食べるシーン

本作はやたらと旨そうな食事シーンが多いのですが、食べてるものはけっこう不味そう。でも美味しそうに見えるのですから、やっぱり芝居がいいのでしょう。木のスプーンもポイント高いのは、不敵に笑いながら何だかわかんない物を食べるリー・ヴァン・クリーフの登場シーンでも証明済み。
そういえばイーストウッドって何かを美味しそうに食べているシーンが思い浮かばないなあ。アイスクリームもチビチビ食べるし。『アルカトラズからの脱出』でもスパゲティ不味そうだったし(あれは無理もないけど)。そもそも何か食べてるシーンがあんまりないような気がするなあ。


ミスター・ノーボディ スペシャル・エディション [DVD]
『ミスター・ノーボディ』より、テレンス・ヒルの食事シーン全部

勝手に厨房の食い物をフライパンごと持ってスプーンで食べるシーンに始まり、どんどん小さいグラスに注いだお酒を飲み干して、そのグラスを背後に放り投げて抜き打ちでソレを撃つ場面でも、すこぶるお酒が美味しそう。酔った芝居がまたうまい。そして、機関車の火で作った豆炒めをまたまたフライパンごと食べるシーンで頂点に。対しているヘンリー・フォンダなんか小さいスプーンでせこせこ食べて実に味気ない。


そして、ラスト二本は、どちらも甲乙つけがたい究極と至高の旨そシーンです。


『マッドマックス2』より、ドッグフードを隅々まで堪能するメルギブ

と、

『ドランクモンキー酔拳』より、師匠の酒の金で豪遊するジャッキー

です。


マッドマックス2 [Blu-ray]
まず、『マッドマックス2』ですが、一緒にいるのが犬だけに、ある種のギャグになっているわけです。ですが! 缶切りで開けた後に、フォークですくって一口食べた時のメルギブの表情!! こんな旨そうな食い物がこの世にあるのかってな恍惚の表情。まさに最高級フランスケーキ状態!! その後空になったドッグフードの缶は晴れて犬に渡り、その残りをブルース・スペンスが指で舐めあげる。ここまでドッグフードを旨そうに描いた映画はないでしょう(あるわけない)。


酔拳 日本語吹替収録版 [DVD]
そして、『ドランクモンキー酔拳』ね。

観た人は何も説明が要らないでしょうが、とにかく次々と持ってこられる中華料理を、ジャッキーがこれでもかっていう旨そ芝居で平らげるんです。口の周りも手も油でベチャベチャで。またこいつも口に入れたまま酒をゴグゴグとやる。極まってますよこのシーンは。このシーンでおなかの空かない人間はこの世に存在しないでしょう。おなかが全開にふくれあがる様もジャッキーのノースタント主義が炸裂してますしね。

*1:この内の一人が確かしょこたんのお父さん