男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢

アルゼンチンタンゴ教室の後にちょうど銀座のレイトショーが間に合ったので、行ってきました。
平日の夜と言うこともあって観客は僕らを含めて数人。

10年前の『危機一髪』公開初日は超満員だったのが懐かしい思い出です。

今回は新作に加えて旧三部作もデジタル・リマスター版で上映されました。レストアされた映像は、指紋もハッキリと確認できるほどクリアになっており、音声に至っては『チーズ・ホリデー』も含めて5.1ch化されていました。昔のビデオをすり切れるほど観ている人間でも殆ど違和感は無く、効果音関係が前後左右に動き回ります。

上映順は新作が先で、旧三部作がその後に続くという形。タンゴで疲れ切っていたので、新作が最初に上映されたのはボクと妻にとっては嬉しい限りでした。


(ネタバレ反転)
『危機一髪』でも『ターミネーター』をパロっていたニック・パークですが、今回はなんと『エイリアン2』!! クライマックスがまんまなので、『エイリアン2』信者としては大笑いでした。

ただ、個人的にはニック・パーク独特の「なんだ、そりゃ?」的なテイストがかなり減っているのが残念でした。今回はその後に旧三部作が同時上映されているのでなおさらです。


やはり『チーズ・ホリデー』の”月の番人(なのに、どう見ても台所器具)”が繰り広げる「なんだ、そりゃ?」の超波状攻撃や、『ペンギンに気をつけろ!』での、ペンギン”マッグロー”が赤いゴム手袋をかぶっただけで「にわとり」に変装しているくだり(しかも、そのゴム手袋を取っただけで「きみか!?」って驚くウォレスがヤバすぎる)、ウォレスを懐柔しようとするペンギンが、頭を撫でられる瞬間にほんのわずか身体を傾けて撫でられやすくするなど、異常にツボ過ぎるギャグが多いのです。
中でも『チーズ・ホリデー』の”月の番人”ときたら、マジックハンド丸出しの手で、方向を変えるときにわざわざ手信号を出す無茶苦茶さ(月の誰に対して出してんだよ!!!)。


↑”月の番人”こいつ自身も凄まじいけど、こいつに対するウォレスのボケぶりも超絶。いきなりお金を入れちゃうあたりも凄いし、それを「飲み込まれた」と癇癪を起こした挙げ句に、再度そいつにお金を入れて笑顔で去る。理解不可能。胸のあたりにある丸いのがカメラにあたるらしく、そこに望遠鏡を当てて観たり、手でかさを作ったりして異様に芸が細かい。引き出しは四次元ポケット状態で、何でも回収して何でも出てくる。クライマックスで缶切りが登場するに至っては絶句するほど面白い。



『危機一髪』ではスタッフが増えて大作化したことにより、エンターテイメント性がアップしているのですが、ニック・パーク独特のテイストは健在で、そのバランス感覚が見事だったと思うのです。
『危機一髪』で一番爆笑なのは、サンダーバードよろしく無意味に大がかりな装置でサイドカーに運ばれていくウォレスが、遂にサドルに座った瞬間、まったく何の工夫もなくただドアを開けてサイドカーに乗り込むグルミット。あれは狂ったように面白い。グルミットのほったらかしブリがその後の献身的なグルミットとは一線を画していてたまらないです。「無」のツッコミが冴えに冴える。


是非とも次作からはニック・パークの好きにやらせて、脚本も独りで書いて欲しいと思います。