男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

エンドレスエイト(その2)

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
な、長門……

原作を読んだときには、長門をロボットのように頼もしく切ない存在のように感じて嬉しかったのですが、今回アニメ化された『エンドレスエイト』(その2)は、京都アニメーションの凄まじい解釈によって、長門の切なさが尋常でなくなっていました。

↑あの長門が本も読まずに、ただただじっと座っている図は全編に漂うライティング処理の素晴らしさと相まって胸が締め付けられるねえ。

恐らく原作者の谷川流も、根本的には一発ネタとして書いていたと思うんですよ、今回の『エンドレスエイト』って。何度も何度も繰り返す時間というネタはSFではポピュラーだし、人間には考えられない時間を意識的に過ごすというのもロボット物ではよくある。

しかし、京都アニメーションのスタッフは、この

600年近い年月、同じ時間軸を繰り返してきた長門

と言うモチーフを、思いっきり掘り下げてきたんですね。しかも、相変わらず原作の改変は殆どせずにやってのけた。

テレビアニメという毎週放送される形態をもメタ的にここまで利用した演出は、ちょっと記憶にないほどです。一話一話を観れば独立してそれぞれのエピソードとして成り立つだけに恐ろしい。

今回に至っては、わざわざ原作のオチを改変してまで

”この話で解決しない”

と言うウルトラ技法をやってのけた。

原作を読んでいる人間にとっては、前回の(その1)の作りは観終わってから

「なるほどこうきたか」

と優越感に浸れるような実験精神だったのですが、今回はそんなこちらをあざ笑うかのように、

「終わらないだって!!!!!」

と驚愕させられてしまった。

これは本当に凄いです。

独立したエピソードとして考えると、前回が「普通の楽しい夏休み」で、今回はトワイライト・ゾーンを彷彿とさせる「後味の悪い」SF短編といえるでしょう。藤子・F・不二雄の異色短編風といってもいいです。

こういったテイストのエピソードは原作にも存在しないので、オリジナルではないこのエピソードでそれをやってのけた京都アニメーションが、やはり恐るべしと言えるでしょう。

これをリアルタイムに毎週満喫できると言うだけでも、第二期の前にハマれて良かった。とてもじゃないけど、これをDVDなどでサラっと続けて観ては味わえなかったでしょう。

だって、




来週で終わるとは限らないんですよ


それにしても、長門が600年近く同じ時間軸を自覚して過ごしてきたという、原作の中では”ごく普通”の設定を、これだけ哀感漂う演出で見せてくれたのは嬉し過ぎます。

キョンに声をかけられて、振り向いた長門の絶望的な表情、プールで「退屈そう」(どころではない)長門、と言う具合に全編「そりゃそうなるだろう」と思わずにはいられない、哀しみに満ちあふれた長門の姿が堪能できます。

誰もが安易に予想していた「同じシーンの使い回し」を一切せず、完全に新規に作りあげた京都アニメーション。今回はサスペンスを飛び越えた、薄ら寒い恐怖が全編を覆うホラーとしても評価できる演出が随所に観られて燃えました。露光過多な処理で茫漠として感覚を表現したファーストショットからして絶好調ですし、夕陽をバックにしたキョンのカットなども緊張感がみなぎった構図で素晴らしい。


と言うわけで、前回に引き続いて、いよいよ京都アニメーションが本領を発揮してきた第二期のエピソード。とうとうオリジナルと言っても過言ではない(その3)が放送されるのでしょうか!? 来週が前回にも増して気になります。


本当に凄い。