男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

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激シブのトワイラト・ゾーン→ドシリアスな実録猟奇殺戮→感動巨編

と言う、観なければとうてい信じられないアクロバティックな傑作。80歳近くでこれを作るイーストウッドは凄すぎ。

”息子が本当の息子じゃないと言ってるのに周りの人間が、そっちの方がおかしいですよと言い張る”Aパートは完全に『トワイライト・ゾーン』系の不条理サスペンスで、警察という巨大な権力が普通の主婦に圧倒的な力で襲ってくる感覚がまず凄い。あの「どうしようもない」感覚をリアリティ満点に畳みかけられる圧迫感は半端じゃないです。
”いやになるぐらい周りに何もない牧場で起きた何か”を描くBパートも凡百のホラーサスペンスが束になってもかなわない凄味が満ちていて、刑事が納屋の隙間を覗き込むバックショットの緊張感をはじめ、執拗に映し出される斧や包丁のインサート・ショットが、これほど効果をあげる不思議!
”裁判劇と事態が好転するカタルシス、そして最後の最後まで結果が分からない作劇”はエンターテイメントの極地。そのくせ絞首刑のシーンのいやな感覚がねっちりと描かれるあたりは、イーストウッド相変わらずブリを堪能できる余裕まで。

近年のイーストウッド映画を支える撮影監督トム・スターンの作り出す映像がことごとく素晴らしくて、観ていてため息が出そうなほど美しい。それでも演出は常に緊張感が途切れないので、二重に目が離せない。
テレビで活躍しているJ・マイケル・ストラジンスキーの脚本がまたエンターテイメントのツボを見事におさえていて、「まさかこんな展開!?」の連続。
予告編すらまともに観ていなかったので、Aパートの「戻ってきた子供が自分の息子じゃない」っていうぐらいしか知らなかったのですが、それが大正解。特にBパートの展開なんて口があんぐりするぐらいのめり込みましたよ。しかも実際の事件だなんて! 最悪。

また、主役を熱望したというアンジェリーナ・ジョリーが最高でした。ちょっとした顔面の筋肉だけで見事に気持ちが観客に伝わる基本中の基本がこれだけ上手いのも凄いです。目の力も画面を突き抜けてきますよ。
対して憎まれ役のジェフリー警部(クソ野郎)を演じるジェフリー・ドノヴァンも最高でした。半開きの口から髪型まで、何から何までムカつく。
頼りになる神父を演じるのがジョン・マルコヴィッチってのも意外なキャスティングでしたが、これまた見事にハマっていました。もしかしたら手のひら返すんじゃないの? と常に観客に疑問を抱かせ続ける絶妙のキャスティング。
そして『ドーン・オブ・ザ・デッド』の我らがC・Jがキーになる刑事を演じていてまたまた美味しいところを持って行っていました。もみあげが無くても最高だぜ!

とにかく凄いパワフルな映画だったので、何度も観るのは疲れそうですが、何年かに一本の傑作なのは間違いないです。

でも、本当に凄いのはこの映画を作った数ヶ月後に『グラン・トリノ』を主演までしちゃって作ってしまうイーストウッドの化け物ぶりですけどね。彼がいる限りスピルバーグも落ち落ち休めないんじゃないのかなあ。

権力に徹底的に立ち向かうダーティハリーと、実は骨が一緒の傑作!