男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

太陽を盗んだ男

太陽を盗んだ男 [DVD]

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地上波で放送したのを観たのが中学生。多分普通の枠では地上波での放送はあれが最後だったんじゃないでしょうか?

放送当時周りでも話題騒然だったことからも分かるように、とにかく中学生男子に訴えかけるものが強烈に充満している映画です。プロデューサーに反対されても断固カットしたなかった中盤のクライマックスである”原爆製造シークエンス”がまさにそれで。
フレンチ・コネクション』の車解体シークエンスに匹敵する、並外れた引き込む力を持ったシーンだと思います。
そして、オーブンでの加熱が失敗して被爆するシーンの哀しすぎる音楽は、一度しか観ていなかったのに仲間内でも延々長きに渡って口ずさまれるほど。
また、お約束ともいえる原爆のタイマー解除のシークエンスは何度観ても手に汗握ります。ジュリーが一回電話切るのが凄いです。

大人になってから観直すと、そういう部分の面白さはそのままに、長谷川監督独特のオフビートな感覚がやたらと面白く感じられるのです。特に原爆奪還からカーチェイスに至るくだりは能天気な雰囲気や、とってつけたようなスタントなどなど被爆の悲壮感などどこへやらと言う感じなんですよね。

この映画がやはり被爆二世である長谷川監督によって作られたと言うのは重要で、日本以外の国ではまず描かれない”被爆”を扱っているからだと思うのです。*1
大量の脱毛から始まり、東急のトイレで歯茎の出血によって初めて自身の被爆に気付くシーンなどは、例の哀しすぎる音楽と共に強烈なインパクトがあるんですよね。ただ、ボクは広島出身なので骨の髄まで原爆教育がしみこんでいるからすぐにイメージが出来るんですけど、やはり基本的な原爆の恐怖を知っていないと捉え方は全然違うのかもしれないですね。上京した時、原爆が落ちた日も知らない人があまりにも多いことに衝撃を受けたぐらいなので、アメリカは論外としても日本でもすでに核兵器に対する恐怖は薄らいでいるのかもしれないですね。せめて『はだしのゲン』の1〜2巻ぐらいは学校での読書を義務付けるぐらいはしたほうがいいと思いますよ。

話がそれましたが、観始めたらグイグイ引きこまれる力がほんとに凄いので、間違いなく傑作だと思いますね。

画質はDVDでかなりきれいになった驚きには及びませんが、やはりHDらしくディティールが細かく再現されていて良いです。プルトニウムの玉の質感や、テーマの一つである70年代後半の東京の街並みがかなり細かく見られます。

*1:イギリスの『風が吹く時』ぐらいしかしらないなあ。