男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ミスト

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信じてたよダラボン!!

フランク・ダラボンが「次はキングの『霧』を映画化する」と言い続けては裏切られてきましたが、遂にこの日がやってきました。

キングの中でも一二を争うほど好きな作品である『霧』の映画化は、ダラボン以外の誰が担当しても非難ごうごうだったと思うのです。みんな「ダラボンならやってくれる」と支持していたはずです。それはダラボンが本来”こっち側”の人間であることを『ブロブ』を観た人間なら知っているわけで、そいつが『ショーシャンクの空に』で見せてくれたような見事な演出で作ってくれるならまず間違いないと。

それでも予告を観た限りでは、モンスターがハッキリと映された映像に若干戸惑いを感じたのも事実で、アメリカの公開から今日まで随分と悶々とさせてくれたもんです。

「結局どうなんだよダラボン!?」

と思いながらやっと日本公開日を迎えたわけです。


結論から言うと、ホントに

「信じてたよダラボン!」

という喝采の言葉しか思いつきません。

本当の意味での純粋なホラー映画で、恐怖映画やスリラーなどではなく、”ホラー映画”が厳然と目の前に繰り広げられる様は、並大抵の緊張感ではない本編と対立するようにボクを狂喜の坩堝におとしいれてくれました。

ボクの中でダントツのホラー映画の頂点である『遊星からの物体X』に、極めて近い満足感です。

<以下ネタバレ>




ダラボンが創造したオリジナルのラストが本当に強烈で、あの後味の悪さといつまでも腹の底にわだかまるズッシリとしたものは、本当に最高でした。あれぞ本当のホラー映画だと思います。

もちろん『ゾンビ』の希望があるようでない見事なエンディングはあの作品をスーパー・エンターテインメントに昇華させていましたが、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』のような、他にはあり得ない後味の悪さこそホラー映画ならではのラストだとボク個人は思います。

正直『ショーシャンクの空に』を作った人間だけに、ダラボンにそういう側面があったことが驚愕で(そして狂喜なんですが)、まさか『霧』のラストにああいう展開を持ってくるというのは並大抵の根性じゃないなと思いました。インディーズ映画ならまだしも、メジャー映画であそこまで凄まじいエンディングを持ってくるのは古今あまり例が無いと思います。あってもDVDの特典にある『幻の衝撃的ラスト』(で、衝撃的だったことなんて一度もないですけどね)扱いだと思いますよ。

脱出してからずっと流れるデッド・カン・ダンスの曲も大好きな曲だけに泣けました。


もちろんラストだけではない。導入からまったくと言っていいほど無駄なの無い、全編緊張感溢れる”篭城モノ”としても久々に誕生した傑作。

CGIが若干バレバレなのが残念な最初の触手なども、ただの触手ではなくてカチャカチャと開いていくビラビラ牙などの造形が圧倒的で、いつしか懸念だったモンスターの直接描写も馴れるどころか緊張感を充分牽引していくのは素晴らしいです。
小説で大好きだった”ロープ”の使い方も、読んだときと寸分違わない映像描写だったのがたまりませんでした。

全体的にこれだけ小説を読んだときの感覚がそのまま映像化されているだけでもかなり衝撃で、薬局に行くクライマックスもよくちゃんと映像化したなあと唖然とするぐらいです。

そのくせ顔面にすでに死亡フラグが立っている副店長のオリーや、こちらもいつ死んでもおかしくない老女教師などが抜かりなく大活躍すると言う娯楽性もキッチリ用意されているのも流石ダラボンという感じでした。


そして特筆なのはサウンドデザイン。これは是非劇場で聴く価値のある逸品。霧に包まれてからの”シィィィィィィィン”という静寂の”ィィィィィィィ”と言う部分が絶妙に体感できるのが壮絶に絶品。センターに配したダイアローグのヒソヒソ音のレンジを上げる事で観客の聴覚集中力を高めつつ、絶妙の無音とノイズをリアに配したセンスは一級品です。前半部分や霧の中で遺憾なく発揮される静寂の緊張感は半端じゃないです。もちろん定番であるクリーチャーの出す音もとびきりの気味悪さです。


ホラー映画を存分に楽しみたい人は何は無くとも必見です!


闇の展覧会 霧 (ハヤカワ文庫NV)

闇の展覧会 霧 (ハヤカワ文庫NV)

原作も超傑作。中篇と言っても普通の小説では長編です。キングにとっては短編といってもいい分量ですけど。