男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

「俺は人間の悪い部分が見えてしまう。お金をたんまり稼いで早く人間から離れて生きたい」

お気に入りの監督ポール・トーマス・アンダーソンの最新作。

パンチドランク・ラブ』から5年も経っているなんてにわかに信じられませんが、そんなに撮ってなかったんだ。

今回は『パンチドランク・ラブ』同様一人の主人公をずっとメインに据えてドラマを構築する手法をベースに、今までにないスケールの大きさを感じさせるロケーションと美術を駆使して新境地を開拓していますね。

監督のスタイルともいえるステディカム長回しや奇を衒ったような固定ショット、極端なドリーショットなどなど、トリッキーな映像演出をほとんど封印しつつ、FIXやパンニングといったカメラワークの中でシネスコ使いならではの絵画的な映像を展開していて大変引き込まれました。前述のスタイルは言ってみればスコセッシやキューブリックなどルーツがハッキリと分かっていながら換骨奪胎が見事だったと言えますが、それを封印することで監督の本来持っているスケールのでかさが溢れる映像スタイルが前面に押し出されているのが作品に合っていたのではないでしょうか。

台詞を一切排した導入部分を始めとして全編に漂う緊張感や、そんなに煽らなくてもというぐらい不安定で研ぎ澄まされた音楽のカッコよさなど最高で、158分延々はりつめた空気の感覚はポール・トーマス・アンダーソン監督の持っているダークな部分がストレートに現れている作品だと思います。他の作品に盛り込まれているエモーショナルなロマンチシズムは一切顔を出さない辺りも新境地と言う感じです。

『ゾディアック』で新境地を開拓しつつ自分の持ち味を研ぎ澄ましたフィンチャー監督の動きと非常に似ていると感じました。


しっかし、ほとんど椅子の上でまんじりともしなかった映画は久々で、いつまでもあの世界が続いて欲しいと思ってしまいました。

そして、やはりダニエル・デイ・ルイスの芝居が圧巻で、観ていてすっかり取り込まれてしまいます。石油のパイプラインを通す土地の権利欲しさと、自分のやらかした罪の口封じのために新興宗教の洗礼を受けさせられるシーンはとにかく最高で、あのシークエンスと呼応するラストの大爆発はカタルシス満点でした。ついでに、ラストのシークエンスでダニエルが何だか分からない物を食べながら芝居するんですが、あの不味そうなんだか美味そうなんだか分からない絶妙な感覚は掛け値なしの名芝居ですね。
僕が役者の良し悪しを決めるポイントは二つあって、「ご飯の食べ方」と「観た後そいつになった気分になるかどうか」なんですが、ダニエル・デイ・ルイスは間違いなく両方満たしまくってましたね。

息子と一緒にご飯を待っている時に、かつて石油の権利を買いに来たけど息子のことでちょっと口出しした奴が店に来たときのくだりも抜群で、怒りをこらえきれなくなってテーブルまで行って改めて文句をまくし立てるシーンは何度も観たいぐらいです。