男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ガントレット [DVD]

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ゴールデン洋画劇場などで事あるごとに放送され、クライマックスの蜂の巣バスのシークエンスを映像で観たことのない人間はいないんじゃないかと思えるほど予告などで垂れ流される、ある意味イーストウッドの代表作。

ところが、id:sumoguriが「バスのシーンしか観たことが無い」という。

もしかしたら、あまりにもバスのシークエンスが予告で垂れ流されているので、観たつもりになっている人も多いのではないでしょうか。

そんな映画が国営放送のハイビジョンで放送されるほど、イーストウッドも巨匠扱いになってしまったんですね。

まあ、本編をそんなつもりで観ると、70年代イーストウッド作品のセルフ・パロディというか、イーストウッドのある意味ジャズ的な風味というか、全編まるっきり確信犯的に盛り上がらない演出加減とかに、極めて濃密なイーストウッド風味を堪能できる怪作に面食らうと思います。

それぐらい、冷静に大人になってから観直して見ると、そのイーストウッド演出の中学生イズムが満喫できる作品でした。ジェリー・フィールディングのやるせないジャジーな音楽が全然アクション・シークエンスにはかからず、ヘリコプター追い掛け回されるバイクのシークエンスも眠気が爆発するほど延々と展開して、時折フィールディングの音楽がタイミング悪くかかるという変てこなセンス。クライマックスである見せ場中の見せ場であるバス特攻ではやたらと盛り上がるだけに、その他の音楽の雰囲気が対照的で笑えます。

ラストも黒幕たちが警官に取り巻かれた衆目の中でバンバン撃ち合ったりしているのに、ボーっと何の反応もせずに見ているだけの警官たちの白けかたがシュールすぎて笑えます。

基本的にイーストウッドの監督作品というのは(本人いわく独学)、いわゆるハリウッド・スタイルにことごとく反骨するスタイルだと思っているのですが、子供の頃からずっとうすうす感じていた「シュール」な感じが、本人の大好きなジャズとしてのスタイルを映画に取り入れているからなのだと最近感じられます。

ただ、この映画におけるイーストウッドのプライベートな嗜好丸出し加減も、現在観るとやけに面白いです。お約束のマゾ嗜好溢れるリンチ・シークエンスなんか最たるモンだし。
バスだけじゃなく全編弾着フェチとしか言いようが無い蜂の巣だらけシーンのオンパレードも常軌を逸していますし(家→パトカー→バス)。

ホント異色作ですなあ。