男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ディセント★★★1/2

夏休みいっぱい映画を観よう企画第三弾。

以前から凄く観たくて期待していた映画が、やっと日本で公開になりました!

洞窟モノに関しては個人的なツボがかなり特殊なのですが、この映画の描写はかなり素晴らしいです。

先ず洞窟に主人公達パーティーが降下してから一切舞台を外に出さず、ありがちな外の世界でヒロインたちの身内がアレコレ捜索するなどと言う陳腐な挿入が一切無い! これが先ず素晴らしい。観客を登場人物たちと同様の舞台に閉じ込めてこそこの手の映画は没入感を生むと思います。
次に一番重要と言ってもいいライティング処理。洞窟は完全な闇です。ここを勘違いした映画がいくつあったことか知れませんが、この映画では、ほぼ(後述)実際に登場人物たちの持っている光源で処理されています。そこでもヘッド・ランプ、ハンド・ライト等に加えて、発火筒、ケミカル・ライト(?)、そしてビデオカメラの赤外線暗視モードなどなど様々な工夫で映像にバリエーションを持たせています。
洞窟内部のデザインも水を中心とした不快感を重視した設定で抜群。


<以下ネタバレ>


映画自体は前半部分の洞窟探検パートと、モンスターが登場してからのホラーパートに完全に分離しており、どちらも大好きなジャンルであってかなりの部分で成功していると思います。
ただ、女性達の間で愛憎関係の裏切りなどがあるのが少し好みではないので残念でした。もっとも、明るさの微塵も無い展開の終幕部分に誘導するには有効に働いている気もします。(もっと別のやり方もあると思いますが)

前半部分の洞窟探検パートは先ほどの光源処理も含めてパーフェクトに近いサスペンスと恐怖が味わえます。人一人が通れるほどの狭い隙間を通るスリルや、そこでつっかえてしまう閉所恐怖感炸裂の部分とそれに続く落盤などは極めて素晴らしい。
割れ目の上部をカムを差し込みながらロープを渡す場面なども興奮必至。

後半部分はその洞窟に地底人的な人型のモンスターが現れて、当然主人公達に襲い掛かってくるのですが、そいつらの発する声などが非常に不快感があってよいです。そして、焦らして焦らして初めて姿を現す場面の演出が秀逸! レジャーとして洞窟にやってきたパーティーなのでビデオカメラを持っているのですが、その赤外線暗視モードによる独特の映像はテレビなどの恐怖番組や心霊番組などでお馴染みなだけに、その映像の中に突然そいつが直ぐそばに立っているショットは久々に心臓が口から飛び出しそうなほどビックリしました。

そいつらが襲い掛かってくる場面では最近の流行よろしくブレブレの映像とせわしない編集のせいで恐怖感が薄れてしまうのが残念ですが、血の池地獄に主人公が落ちた際に俯瞰のFIXショットのまま背後に迫ってくるカットは肝が冷えました。

そいつらの餌場に主人公が落ちてからも、再びビデオカメラによる映像処理と相まって非常に恐怖感が高く、音だけで探知するそいつらの特性を生かしたサスペンスも(巧く機能していないものもありますが)中々のものでした。
終盤に際して前述した愛憎に関わる仲間内の疑心暗鬼や、光源処理の不徹底(光のないはずの部分で何故か何かの反射光が)が非常に勿体無いのですが、いよいよ主人公が一人残って外光を頼りにやっと外の世界に出た時の開放感と寒々とした後ろめたさを表現した部分は結構好みと言うか恐かったです。

お約束の演出ですが車の窓を開けて吐いた主人公につけてカメラがパンしたら仲間の姿がバーンなどは結構ドキっとします。
個人的に結局それが主人公の気絶した時の夢で、最後は暗闇に取り残されるバッド・エンドもホラー映画としては生ぬるくなくて高評価です。

後半部分の転換には賛否はあると思うのですが(ボクは肯定します)、全体的にホラー映画として一本筋が通っていて、洞窟と言う舞台も全く無駄にしておらず、ありがちなユーモアや作者の気恥ずかしさから生じる誤魔化しに過ぎないパロディやギャグが一切無いのが非常に好感が持てました。ホラー映画は全編緊張して恐がらせてこそ初めて評価の土壌に乗るんじゃないでしょうかね。