男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ALWAYS 三丁目の夕日 豪華版 [DVD]

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山崎貴監督の作品は志向として凄く共感できるものの、演出が常に絵に描いた餅という印象。一番よくないのは企画の動機が薄っぺらく*1、かつそれが直ぐに見透かされてしまうところでしょうか。それならそれでそれを超えるほどの面白さを持っていればいいのでしょうが、飛びぬけてコレという特徴がないので結局はエピゴーネンに終わってしまうという印象です。

ただ、今回は個人的に特に大好きなモチーフだし、企画の動機になっている『オトナ帝国』がまるで好きになれなかった反動なのか、嫌いではないです。

  • 良かったところ

堤真一はあまり好きな役者さんでは無いのですが、京極堂での心底めんどくさそうに眩暈坂を下りてくる最高の芝居で少し見直し、今回も誇張された漫画のようなキャラを上手く演じていて良かったです。

堀北真希が凄く良かったです。シュークリームを絶対に食べていそうな雰囲気とか。

薬師丸ひろ子も凄く良かったです。メリハリが利いている声はいいです。本当に優しそうだし。

須賀健太くんは最高でした。登場してからのうな垂れた落ち込みぶりは激しく共感できましたし、全編説得力のある子供芝居を見せ付けてくれて、他の子役達がタダでさえ冴えないのをさらに強調するという逆効果すらありました。次回作の『花田少年史』が観たくなるほどです。

ピエール瀧。いうことなし。

○ワイプ処理が昔の時代の処理になっていて素晴らしい。

シネスコ(ただ構図を使い切っているとはいえない。もっともその使い切ってない感じが当時のプログラム・ピクチャーっぽいといえばいえる)

  • 良くなかったところ

○あんまり効果的でないオープニングの長回し

○季節感の欠如。セミが鳴いてても全然暑そうに見えないし、雪が降っていても全然寒そうに見えないのはどうしたものでしょうか。せめて汗は常に拭うほど流れ、吐く息は白く肩を常にすくめるぐらいはすべきだと思います。

吉岡秀隆


もっとも残念なのは食事シーンが少なすぎることです。極端に言えば食べ物を食べられないシチュエーション以外は常に何かを食べたり飲んだりすべきだと思います。何故かというと、ボクは記憶及び想い出を喚起するのに一番重要なのは”匂い”だと思っており、その”匂い”に一番関連しているのが食事だと思っているからです。視覚や聴覚からでも匂いは連想できるでしょうが、食事ほど直接的ではないと思います。で、食べ物を映し出すだけではダメで、必ずそれを食べるという芝居と合わせて”匂い”が観客に想起され、それによって当時の思い出なり記憶をそれぞれ個人の持つもので喚起されると思います。そのプロセスを脳で発生させることができれば、こういった映画の最大の目標である過去への憧憬へスムーズに誘導することが出来るのだと思います。
しかるに、この映画ではあまりにも食事シーンがおざなりに処理されているのが納得できない。朝昼晩ともっとガツガツご飯を食べまくるべきですし、それを観たかった。小道具や背景の再現も大切でしょうが、日々の食事ぐらい考察と再現に意義のあるモノはないと思うんですけどねえ。

ボクが口を濁していると感じた方はもっと溜飲の下がるであろうこちらをチェック!
http://d.hatena.ne.jp/sumoguri/20060619#1150668456
ただし、この映画が大好きな人は読むとダメージ大。

*1:『打ち上げ花火』→『ジュブナイル』、『マトリックス』『M:I2』→『リターナー