男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ポセイドン 上 ハヤカワ文庫 NV キ 3-2

ポセイドン 上 ハヤカワ文庫 NV キ 3-2

ポセイドン 上 ハヤカワ文庫 NV キ 3-2

ポセイドン 下 ハヤカワ文庫 NV キ 3-3

ポセイドン 下 ハヤカワ文庫 NV キ 3-3

ポセイドン・アドベンチャー』の原作が、リメイク版に合わせて(タイトルの改題されて……)上下で再刊。
子供の頃立ち読みした早川文庫は分厚くて表紙がクリスマス・ツリーに群がる人たちの映画本編の写真だったのを覚えています。子供の頃では映画との違いばかりが気になって、殆ど覚えていなかったのですが、今回読み直して思うのは、その変更部分というか映画では描かれていないキャラクターの内面描写が凄かったということです。

ポール・ギャリコの徹底的にクールな視点はとにかく新鮮で、あの映画の原作を読んでいるという感じではなく、全く別の代物を読んでいるような感覚です。上下逆さまになって転覆した豪華客船から牧師に連れられて上へ登っていくだけのプロットで、彼らの乗り越える障害に関しては映画はさすがにバリエーション豊かでしかもハラハラドキドキですが、原作の方は二つの段差を登攀する(同じ障害が2つ続く辺りも映画では鬼門)→乗務員通路で照明が切れる暗闇地獄→水没トンネル→残骸の山登り、というぐらいです。しかもどれもそれほどハラハラドキドキの緊張感に重点は置かれておらず、あくまでもその状況に陥った登場人物たちの内面やリアクションをこれでもかとリアリティ満点に描写していくことに費やされます。そのメンバーの中でもリーダーであるスコットの内面だけは一切描かれず、他の登場人物たちの観察によって様々な捉え方をされるあたりが実に興味深く、かつ印象的でした。映画でも衝撃的なクライマックスの展開(現在でもかなりショッキング)は、小説では少し違った展開をしつつ呆気にとられるように訪れるのがまた強く心に残ります。しかもそれにたいする登場人物達のクールでリアリティ満点の感情が凄いです。最後の最後まで徹底的にそれは続き、映画で得られる感動的なカタルシスは全く読後に与えてもらえないという凄まじさ。

結構というか、かなり凄まじい類の読後感で、ああいうのは中々味わえないなあと感じました。子供の頃読んだときは全然思わなかったのですが……

オリジナルの映画で、パニック映画としてはドラマとしても見応えありすぎの傑作。

ポセイドン・アドベンチャー [DVD]

ポセイドン・アドベンチャー [DVD]

今回のリメイクと平行して競作されたテレビ版。