キング・コング★★★★
いやあ素晴らしいですよコレは。
ピーター・ジャクソンの念願が成就した企画ですが、その愛情の注ぎこみ方は半端じゃないです。
<ネタバレ>
オリジナルには実は欠けているコングとアンのラブが、これでもかと描かれているので、クライマックスの悲劇に向かって泣くなというほうが無理なぐらいの展開をみせてくれます。しかも、CGのコングの芝居が素晴らしくて、WETAとアンディー・サーキスの仕事は表彰状モノです。あれはオスカーあげていいと思いますよ。アンがコングに、コングがアンに心惹かれていく過程が、とてもピーター・ジャクソンとは思えないほど丁寧に描かれており、そっちの部分を担当したフラン・ウォルシュの仕事も評価大です。
逃げ出したアンが色んな恐竜や昆虫に襲われるくだりは本編でも白眉中の白眉で、ここまで徹底的にやられると、どうしようかっていうぐらい燃えます。挙句にコングが助けに現れてからの一大バトル・ロイヤルは壮絶の一言で、谷の間に落下してからは葦を見事に使った空中戦まで披露。その間でもずっと小さいサイズのアンに危機が訪れ続けるのも絶叫モノの凄さ。一対一の対決に至ってはキチンとオリジナルを踏襲した口裂きとその後の仕草(裂けた口を確かめる)も完璧。加えて、歩み寄ってきたアンに気恥ずかしさから背を向けて走り出すコングが、さっと彼女を自分の背中に乗せて走る場面のエモーショナルなこと。泣ける!
しかし、ピーター・ジャクソンのピーター・ジャクソンたる部分もキチンと残っていて、原住民の笑っちゃうぐらいダーティーなステレオぶりと、その残虐描写(頭を執拗にかち割ろうとするあたりは絶品)。嵐の海を棒高跳びのように船に渡ってきてアンをさらうあたりの”やったぜ”感は他に類を観ない。
アンを助けに行く救出隊の冒険も、オリジナルに負けない波乱万丈ぶりで、ブロントザウルスの群れから逃げるシーンで崖が次々と崩れていくあたりは激燃えでした。
そして目玉中の目玉といえる谷底の虫虫大襲撃のシークエンス!!
あの沼地から湧き出てくる得体の知れないミミズの化け物の造型は、トラウマ確実。カマドウマの化け物に加えて、壁の穴から一瞬だけ出てきて人間を丸呑みにする恐怖感抜群の何かまで凄すぎ。
が!
本当に凄いのはこのシークエンスの解決法! 臆病者のレッテルを貼られた活劇俳優(よくぞここまでニセモノ臭い風貌を見つけてきたもんだ)がターザンよろしく機関銃片手に参上する場面は爆笑必至! オスカーをとったら誰にも文句は言わせないぜ的なピーター・ジャクソンの俺節を思う存分味あわせてくれる名シーンでした。
オリジナルで大好きだった、ニューヨークへのあっという間の場面転換も、こちらはフェード・アウトではあるけども、同様に「どうやって運んだのかさっぱりわからない」あたりが最高。2億ドルかけた映画でここまで尊重するのは、あまりにも良い仕事。
ニューヨークに舞台を移してからはクライマックスが分かっているだけに、もう涙腺緩みっぱなし。それでもアンじゃなかった金髪女を次々と放り捨てる描写も遠慮なく描く(サラウンド・スピーカーからの骨折音を聴き逃すな!)。散々煽っておいた電車襲撃がなかったのは残念ですが、アンとのスケート場のダンスあたりからは、不覚にも感情移入しすぎて涙が……島での朝焼けがエンパイヤ・ステート・ビルの上で再現されるあたりになると、複葉機が登場して普通なら燃えまくりなのに、「くるんじゃなあい!」と心が拒絶。こんな気持ちにさせるなんてピーター・ジャクソン凄いよホントに。
号泣必至の別れの演出は、目から命の灯火が消えるところまで表現したWETAの力と相まって本当に感動しました。
ドリスコルが脚本家に設定変更されているあたりも、コングとの対比として実に良かったと思いましたし(船上での撮影シーンでオリジナルのシーンを再現するあたりは巧い)、コングのお披露目ショーにアンが参加していないという変更も、そりゃ当然だよなという感じで、キチンとラブ・ストーリーとして疑問のない展開でした。
とにかく大満足でした。
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2005/12/14
- メディア: DVD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
早く観たいなあ。
- アーティスト: サントラ,ジェームズ・ニュートン・ハワード
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/12/21
- メディア: CD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
キング・コング
アルバム名: King Kong
アーティスト: JAMES NEWTON HOWARD
ジェームズ・ニュートン・ハワードは急きょ登板した訳ですが、かなり良い仕事だったんじゃないでしょうか。印象に残る音楽は無いのですが、コングとアンのシーンでの哀感溢れる音楽は涙を誘います。