ニューヨーク1997
ボクが1981年の9月30日に「ジョーズ」を水曜ロードショーで観てから、1983年5月23日に日立のVHSを購入するまで約一年半。この間に一期一会とも言うべき映画をたくさん観てきました。
その中にこの「ニューヨーク1997」がありまして、どれぐらい観終わったあとに熱狂したかは想像にお任せするとして、以前テレビ東京が放送した、恐らくその時の放送である青野武がスネークの吹き替えをしているバージョンを久々に見直しました。
カーペンターは徹底的にシネスコに拘る映像作家ですが、日本での扱いはソレは酷いもので、最近でこそシネスコサイズで殆どが観られるようになりましたが、LD時代には殆ど日本ではノートリミング版は発売されませんでした。アメリカで次々と発売されるスペシャル・コレクターズ・エディションのLDを輸入ショップで高いお金を出して買っていたのですが、日本では結局DVD時代になってもそれらは発売されませんでした。勿論メジャー進出してからの「遊星からの物体X」以降はそれなりに発売されましたが、カーペンターが最も輝いていたのはマイナーレーベルの頃ですから、それらが日本で扱われないのは何とも寂しすぎます。
で、スペシャルエディションの勿論ノートリミング・シネスコ版で初めてこの「ニューヨーク1997」を観たときはぶっ飛びました。
とにかくシネスコの画面がカッコいいんですね。
今回テレビ放送丸出しの画質の悪いトリミング版を観直すと、抜群に面白いB級映画(本当はこの呼称は好きではないんですが)に過ぎないこの映画ですが、カーペンターが意図したオリジナルのシネスコサイズで観ると突如A級のB級映画に様変わりするのです。
カーペンターの映画ぐらい、画面サイズが非常に重要であることを認識させてくれる代物は無いので、カーペンターの映画がシネスコサイズで観られる現在の状況を幸せに感じて、間違ってもビデオのトリミングサイズでは観ないことを願うばかりです(とはいっても、黄金期のカーペンターの映画はシナリオが本当に面白いので、トリミング版でも充分面白いんですけどね)。
それにしても青野武のスネークはワイルドですねえ。カート・ラッセルのオリジナルはクールなイメージですが、青野スネークは悪党丸出しで面白いです。リー・ヴァン・クリーフのホーク(みたまんまのネーミング!)がスネークの経歴を読み上げると、たっぷりと間をとってタバコを取り出して火をつけて、ゆっくりと一口吸って、マッチの火を吹き消してから
「お前誰だ?」
と一言だけ言うのが最高ですね。あの異常な間が実にスネーク。
他にもクライマックスで恋人のブレーンが死んでしまったマギーが黙って差し出した手に、最後の武器である銃を黙って投げ渡し、にやりと笑って走っていくスネークが無茶苦茶カッコイイです。