男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

宇宙戦争

どうにも「宇宙戦争」ショックが尾を引いています。

http://d.hatena.ne.jp/walkeri/20050706#p2

こちらの怪獣映画としての「宇宙戦争」評は実に共感できます。あれはやっぱりスピルバーグ版の初代「ゴジラ」だと思うんですよね(他のゴジラ映画は無視)。

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ボクは怪獣映画及び特撮映画にコレといった思い入れが無いのですが、この「ゴジラ」だけはかなり大好きなのです。

何故かと言うと、この一作目の「ゴジラ」だけはゴジラが絶対恐怖として存在しているからです。人間が持つ巨大な物に対する原始的な恐怖がアレ以上に描かれている映画には未だにお目にかかったことが無いですし、それがただただ海から現れて街を蹂躙していく様はまさに恐怖そのもの。存在と行動がどちらも恐怖と言う凄まじさ。勿論日本の被爆体験が生んだ他の国の人間には到底理解しにくい恐怖のメタファーとしての存在なんでしょうが、そんな理屈は抜きにしてデザインもプロットも演出も音楽も飛びぬけて怖いわけですあの映画は。

巨大な生物が大暴れと言うプロットは当然「キング・コング」が元祖になるのでしょうが、個人的にはギラーミン版(リック・ベイカー版というべきでしょうか)のコングがトラウマになっており、あれを観た日以来、周期的に巨大な生物が自分の町に近づいてくる、及び自分が襲われると言う悪夢をよく観ます*1

ただ、「キング・コング」は見直してみると、ヒーロー性が強調されており、存在は恐怖だが行動は実は恐怖ではないんですね。女のために大暴れしているだけですから。

それに比べて初代ゴジラは違います。水爆実験で起こされた怒りかなんだか知らないけど、ただただ無茶苦茶にしていくのが最高に怖いのです。特にテレビ中継のクルーのタワーに迫る場面は完璧にトラウマで、実況をしているアナウンサーの「みなさん、さようなら」からして惨すぎる。

そういう意味でも、スピルバーグが「宇宙戦争」を製作するにあたって「いいアイデアが浮かんだ」と言っていたのを「新しいオチ」と勝手に解釈した挙句に「結局原作と同じじゃないか」と筋違いの論調を生んでいるようですが*2、あのアイデアとはすなわち「宇宙戦争のリメイクはちょうど俺ゴジラできるぞ。うっしっし」に違いないと思うんです。だから、「インデペンデンス・デイ」が製作されたときに、侵略ものとしての映像化がされてしまったので、ほとぼりが醒めるのを待っていたんだと思うのです。

つまりスピルバーグの「宇宙戦争」は誰も成し遂げなかった初代「ゴジラ」に匹敵する恐怖映画だとボクは思うのです。

勿論前回も書いたように終盤の部分は問題が多く、初代ゴジラがクライマックスに至るまで持続し続ける絶望的な恐怖感と、ソレに対する映画としてのカタルシスに満ちているのに比べると数段評価は下げざるを得ないのですが、それを差し引いてもなお前半の圧倒的な恐怖感の完璧に近い構築は揺ぎ無い傑作だと思います。

*1:一番印象深いのは、自分の住んでいる団地にまたがったコングが指を左右の窓から入れてボクと母親をまさぐるように探していると言う夢で、母親が突然「説得してきちゃる!」と痴呆丸出しの愚行を宣言したときは心底戦慄しました。説得なんか絶対無理そうなところが怖いのであって。

*2:そもそも何であのエンディングを変える必要があるのか聴きたい位だ。