ハスラー2
公開当時、日本は「トップガン」とこの作品で第一期トム・クルーズ時代を迎えておりました。そして、この映画は日本中にビリヤード場を乱立させました。この映画でビリヤードに目覚めた*1世代としては、その殆どの仕草をトムなりポール・ニューマンなりの仕草をなぞっているのです。
ガッツ・ポーズの取りかたや、お金を受け取るときに口を鳴らす仕草、後ちょっとというところで外してしまった時の「髪の毛一本の差で……ギャラリーはああ…っとため息(仕草は大げさなトム演技で)」とか。
まあ、そんなことはどうでもいいんですが。
この映画は当時スコセッシにかなり入れ込んでいたボクが初めて劇場で体験した映画で、そのスコセッシ体験はかなり強烈でした。
その後ビデオで浴びるほど観た映画で、ボクの中のスコセッシ・ワークとしては「レイジング・ブル [DVD]」「グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]」「タクシードライバー 〔SUPERBIT(TM)〕 [DVD]」に並ぶ重要な映画です。
このスコセッシ・ワークは観るものの心に必ず映像のダイナミックさとパワフルな力を思い知らせてくれます。
先にあげた三作と比べるとこの作品はどちらかというと商業的に偏っている印象を持たれていますが、作品としては非常にクールで肩に力の入っていない分(なんせ自分とは何の関係も無い映画の続編ですからね)、思いっきりやりたい放題しているのがスコセッシの持ち味を存分に堪能できるのです。
ファミレスで朝食をとるだけのシーンのファースト・ショットとしては、到底出資者を説得できるとは思えない異常なクレーン・ショットで急速にカメラが人物に寄って行ったり(何でここまでダイナミックなカメラ・ワークが必要かどうかではなく、ただ単に凄い)。
ブレイクするショットでのこれまた強烈な移動に加えての強烈なズームアップの併用など、これでもかと脂の乗り切ったスコセッシのカメラ・ワークが冴え渡ります。
そして、驚くのがそのどれもが適当なショットではなく、計算ずくのショットだということです。とりあえずカメラを動かせば何とかなるだろうという適当な考えは髪の毛一本ほども見受けられない。
後のウォルフガング・ペーターゼンがパクった、人物の周りをカメラがグルングルンいつまで回るんだろうというほど回りまくる激クールなショットもキチンとポール・ニューマンが絶妙のタイミングで立ち位置と向きを調整して顔面の向きを計算していたりします。
トム・クルーズの本当に若さあふれるやんちゃぶりや、ポール・ニューマンの激シブぶりなど、キャスティングもバッチリはまっていて申し分ありません。「アビス」で有名なメアリー・エリザベス・マストラントニオ*2もポール・ニューマンを相手にバランスを崩さない好演で三人の風変わりなロード・ムービーに華を添えています。
ポール・ニューマン演じるエディが急にやる気を出して再びキューを握ったのはいいのですが、その出鼻をくじくように美味しい役を持っていくデブ・ハスラー*3を演じるフォレスト・ウィテカーもこの役から非常に印象に残り始めました。
10年ぶりぐらい振りに見直しても全く色あせないクールな映画でした。
ハイビジョンの見所としては、当然ポール・ニューマンの皺も見所ですが、トムの若いピチピチの肌もなかなか結構良く再現されています。冬の白い息や、雪の白さの再現もなかなかのものです。エディのキャデラックの光沢や、着ている服も値段を実感させる再現度でした。何よりビリヤード台やビリヤードの球の微妙なニュアンスが見事で、ため息が出るような濡れた雰囲気が味わえます。