花とアリス 特別版 [DVD]★★★1/2

花とアリス 特別版 [DVD]

いやあ、久々に岩井俊二監督らしい作品を観られてかなり満足です。

もともとのキットカットのショートムービーを観ていたのですが、よくもまあ世界観をこれだけ広げられるなあと感心すると同時に、落語のようなプロットにあれこれとセンチメンタルなエピソードを無理なく絡める脚本も相変わらず巧いと思いました。

鈴木杏はお家芸になった感もある、猫背のちょっと痛い風味な”女子”を地なんじゃないかと思わせるほどナチュラルに演じていましたし*1、相手役の郭智博もヌボーっととした現実味のないキャラを飄々と演じていました*2。

アリス役の蒼井優もリアリティのある女子高校生らしく演じていながら、お父さんとのエピソードや、要所要所で見せる掠れ声で心情をチラっとのぞかせるくだりなどでジーンとさせてくれました。バレエの場面は篠田昇の撮影と相まって凄く素敵でした。*3

岩井俊二自身による音楽も完璧に作品にマッチしていて、篠田昇も亡くなったので次からは撮影も自分でやっちゃいそうな感じですね。

ただ、「ラブレター」などとは違って、散文詩的にあらすじが紡がれるタイプの作品なので若干上映時間の長さが気になるところです。（これは岩井俊二の長い作品全般に言えることですが）

*1:それでも、泣くのをこらえるアップはグっと来ました。

*2:現実味がないように見せかけて、抜け目なく鋭い観察眼を持っていたりするあたりは岩井キャラの専売特許でしょうか。

*3:制服姿がやたらと綺麗なのも、女性を撮らせたら天下一品の岩井俊二の本領発揮でしょうかね。