男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

帝国の逆襲

続いて「帝国の逆襲」を鑑賞。同じく日本語吹き替え版で音声解説字幕。

音声解説は今回監督のアーヴィン・カーシュナーが参加。実際にあまりルーカスが干渉しなかったことや(まあ、もともと自分の先生だし、自分で頼んでいるんですから当たり前ですが)、プレミアではルーカス自身は参加しないで「あなたの映画だから」と名誉を譲ってくれたというエピソードは素直に良い話ですね。

「最近評価が高まっている」という話も興味深くて、ファンやマニアの間では「帝国の逆襲」の評価は公開当時から高かったように思うのですが、僕が子供の頃は「一番つまらない」というのが定説だったように思います。僕がリアル・タイムに観ていたのは「ジェダイの復讐」からで、次が「新たなる希望」そして「帝国の逆襲」という順番で、当時は僕も「一番つまらない」という感想でした。全体的に地味な印象と暗いイメージがあったからなのかもしれません。

もっとも、見直せば見直すほど、その質の高さに感心するわけですが。

まず、シネスコの高画質で観て初めてピーター・サツシキーの撮影の素晴らしさが分かりますし、ジョン・ウィリアムズの前作とは打って変わって(そして、ここでも映画が求めている本質を見極めた)ダークでテンションの高い音楽にも興奮する。そして、ジョー・ジョンストンの持ち味がフルに発揮されたドッグ・ファイトの素晴らしさ。「ジェダイの復讐」では大混戦の醍醐味がクライマックスで味わえますが、こちらはファルコン号とタイ・ファイターのチェイスが宇宙空間ならではの3次元的演出で繰り広げられるのですからたまらない。このあたりの演出の切れ味は多分に日本のアニメにも取り込まれている部分ですね。カーシュナーが音声解説で明らかにしたように、

「カメラの動きやカメラの中での動きにメリハリをつけることでリズムを産み出す。映画はリズムがすべてで、観客もそれを求めている」(少し僕流に解釈してます)

が、物の見事に証明されているのが最高です。
ボクが一番好きなのは、スターデストロイヤーに挟み撃ちにされたファルコン号が急降下して逃げる場面。
シネスコ画面のフレーム左奥からきりもみでフレーム右に向かい、そこで大きく旋回し、またフレーム左に凄いスピードで横切り、それをタイ・ファイターが追撃しつつ、カットが変わってフレーム右から大きくきりもみでフレームインしたファルコン号がそのままフレーム左へすっ飛んでいくのをパンニングで捉える。人間の視覚の生理を見事につかんだ動きと編集の見事さは特筆物の場面です。
ここで一番重要なのはファルコン号が単に左から右へ抜けないで、フレーム右で旋回して大きく左に画面を横切る部分です。このS字運動が観客に画面の中の奥行きを感じさせるわけです。映画は二次元の映像で構成されている訳なので平面的な動きでは観客の生理に馴染んでしまうだけです。奥行きを感じさせることで映画の中の世界を体感させることが出来て、それがひいては没入感につながり、それがアクション・シークエンスの興奮を産む訳ですね。だから次に来るパンニングのショットで観客の視点をグウウっと引っ張り込める訳です。後は小惑星チェイスへ一直線。

前半のクライマックスであるスノーウォーカー襲撃シーンで、サウンドデザインのベン・バートが遠くから迫るスノーウォーカーの足音に演習中の大砲の音を当てたらピッタリだったというエピソードに納得でした。
あのシーンは前振りに双眼鏡で覗いた望遠レンズ処理の地平線が二回挿入されるのがキモで(遠くで響く大砲の音もそこにかぶる)、遠くから何かが迫ってくる恐怖感が素晴らしいです。
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」でも同様のシークエンスがありますが、あちらはセオデン王が振り向くと横一列にじゅうが並んでいるショットに切り替わっていて、残念ながら「何も無いショット」が二回挿入される前振りには及ばない。観客と登場人物の感情の一致のさせ方に微妙なずれが生じているのが原因かもしれないですね。(まあ、ピーター・ジャクソンの演出が現代的だともいえるんでしょうかね)


ヨーダの芝居をつけたフランク・オズをオスカー候補にしようとしたけど、俳優協会からクレームが出て駄目になったというエピソードで

「人形劇のほうが役者より何百年も歴史があるのにおかしな話だ」

というのも目からうろこが落ちました。そういえばそうだ。

それにしても繰り返しになりますが、陰とバックライトを多用した暗い絵作りとジョン・ウィリアムズの音楽は最高です。