男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

28日後…

ダニー・ボイル監督のイギリス産ゾンビ映画

ゾンビ映画としては宣伝されていませんし、本編でもゾンビとは一言も言及しないのですが、ジャンルとしては間違いなくゾンビ映画です。

ドーン・オブ・ザ・デッド』でも用いられた改変、走ってくるゾンビとしてはこちらのほうが先駆ですね。(「バタリアン」を除く)

ゾンビの恐怖の一つに「同じ人間に襲われる」という暴動や戦争に匹敵する不条理な恐怖感があるのですが、この映画でもそれは特に強調されて描かれています。中盤以降は「軍隊の生き残り」が登場しての内ゲバが起こり、結局ゾンビだろうが感染者だろうが、人間は同じ種族で殺しあうという事をさらっと描いてます。ゾンビ映画には結構この展開多いんですよね。

ロンドンを舞台にした前半部分はかなり出色の出来で、緊張感が半端じゃないです。感染者たちの描写は眼球が真っ赤に充血して奇声を発しながら襲ってくるので、単純に狂人集団や邪教集団に襲われる類の恐怖が味わえます。*1

仲間の一人がいきなり感染してしまうや容赦なく仲間に殺されるくだりの非常にエグくて好みです。ああいうのは非常に恐くて好きです。

中盤車でロンドンを脱出するくだりがあり、トンネル内で車がパンクして…当然感染者たちが追い迫ってくるお約束があるのですが、ここの緊張感の引っ張り方はただ事ではなくて、トンネル入り口から徐々に影が奇声と共に迫ってくるのは、タイヤ交換の切迫感と共に近年まれな緊張感を味わいました。

ロンドンの牧歌的な風景の中をまるでハイキングしているように進む、主人公グループの擬似家族的な感覚も凄く好きで、本来お約束だと思われる途中での襲撃もまるでないのがよかったです。

後半は先にも書いた軍隊の残存兵と共に女性を巡ったいざこざがある訳ですが、ここではあまり感染者の恐怖感はあまりなく、少し残念でした。

ただ、その最中に部屋に踏み込んだ感染者から逃れたヒロインの女の子が、見立て鏡の後ろにぶら下がって隠れる場面は緊張しました(足を下ろすと気づかれるのでずっと懸垂状態)。鏡一枚向こうには感染者が目をギラつかせていてたまりませんでした。

ラストは二種類収録されていましたが、まあどちらも無難なエンディングです。ハッピーエンドとアン・ハッピーエンド。ホラー映画としては後味の悪いほうが好きですが、個人的な好みはハッピーエンドです。

*1:個人的には、ゾンビ映画に拘らず、狂人集団や邪教集団などのほうが絶対に恐いと思います。ゾンビは外見は人間ですが、観客としては猛獣と同じように捉えられるので、そういう意味での恐怖は薄らぐと思うのです。邪教集団の恐怖を恐らく最も完璧に描いた「悪魔の追跡」を観れば、その恐怖感が半端じゃないことが分かると思います。ただ、何故か最近はそういう映画は作られていないですよね。