男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

隣人は静かに笑う★★★1/2

凄い!

とにかく呆気にとられるようなテンションで突き進む、パラノイア演出全開の傑作。

前から噂には聞いていたが、マーク・ペリントン監督のアプローチは凄まじくチャレンジング。

ピントのボケた意味不明の風景と対象物から始まる冒頭!
ハイコントラストで終始緊張感がみなぎるボビー・ブコウスキーの撮影!(シネスコ!)
カイル・クーパーの十八番である神経を逆撫でるクレジット・タイトル!
振り向くと後ろに立つ女!(お約束なのに絶叫!)
張り巡らされて最後の最後に結実する伏線!
卒業アルバムの粒子の荒れた白黒写真をめくるだけのサスペンス!
”現場”に遭遇したヒロインが、それを覗き見るときの異様としか形容のしようが無い目のアップ加減!
決定的な写真を観るときのモンタージュとジャンプショット!!
クライマックスのパーティーシーンにおける照明とエキストラの配置加減!
などなど、どれをとってもまさしく恐怖映画のそれ!

近年まれな(ハリウッドでは滅多にお目にかかれない)後味最悪のエンディングと相まって、見終わったときの神経の疲れ方が並じゃない。

アンジェロ・バダラメンティもサスペンスであるはずのこの映画(勿論サスペンス映画としても秀逸)を恐怖映画にしてしまおうとしたペリントン監督の意図をよく汲んで、終始不安感と緊張感を煽る音楽を貫いていて素晴らしい。

アーレン・クルーガーの脚本も、実は大風呂敷な題材を「隣人」という一点に絞った「トワイライト・ゾーン」的(つまり、ロッド・サーリング的)な構成で観客を驚かせることに成功している。観客が無意識に馴らされているハリウッド式の予測をいちいち逆手にとる手腕は見事。

同じアーレン・クルーガー脚本の「ザ・リング」ではクライマックスのカーチェイスがとってつけたとしか感じられないのに対して、この作品のクライマックスのカーチェイスの緊張感とテンションは半端じゃない!

取り合えず、日常的な「隣人」というモチーフがこれだけの恐怖に成り得るのを見事に劇映画として成立させた功績は大きい。(つくづく邦題の「隣人は静かに笑う」は傑作)


追記:全編にフェード・イン、フェード・アウトのつなぎが多用されていて、それがまた不安感を煽る。