ベストキッド
テレビで放送。
久しぶりに観たが、監督のジョン・G・アビルドセンが「ロッキー」同様、しっかりとしたシナリオを得て傑作に仕上げている。
とにかくシンプルな筋立ての中に絶妙なキャラクター設定と、やたらとしっかりとした思想に裏打ちされている。
ラルフ・マッチオが演じる主人公ダニエルは今観ると、凄く社会性も協調性もあって、元々人間が出来ているのが面白い。
これだけいじめられる原因が本人にないあたりも珍しい。そうなると感情移入が難しいのかと思いきや、実は「近所の実は空手の得意なおじいさんと仲良くなる」という願望に主題がおかれていることが分かる。
もっとも、いじめる側の「コブラ会」の連中も笑っちゃうぐらい観客の敵対心を煽るあたりもなかなか巧い。
また、エリザベス・シューが演じるヒロインがまったく穢れのない「いい女子」なのもなかなか無駄がない。
ダニエルがコブラ会の連中にコテンパンにやられるや、掌返して友だちづきあいを辞めるクソ連中に対して、積極的に気を使って場を取り持つ場面を1カットで処理するあたりもアビルドセン侮りがたし。
ともあれ、一番の要は近年滅多に見られない、修行に尽きる。
空手の名人ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)の
「カラテェ…フォー…ディフェンス・オンリー」
はあまりにも有名だが、それ以外にも結構説得力のあることばっかり言う。
トム・ソーヤー以来のアメリカ伝統「ペンキ塗り」や、「ワックスがけ」が実は空手の訓練だった事がわかるくだりは鳥肌もの。(実際どうなのかどうかなんてどうでもいいことは見識のある映画ファンなら言うまでもない)
そして、クライマックスの空手トーナメントの構成も抜群で、凄く盛り上がる。「ロッキー」がまぐれじゃなかったことの証明だ。
え? 「2」?
人間誰にでも得て不得手がある。