男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

プログラム47『ミクロの決死圏』

子供の頃のワクワクがよみがえる

アマゾンでFOX系のブルーレイがバーゲンされていたので、早速注文してみました。次の日には売り切れていたので、やっぱりみんな値段で躊躇していたんですね。ちなみに、アメリカ版は安価で日本語もそのまま収録されています(中身は同じディスクってことですね)。

Fantastic Voyage [Blu-ray]
Fantastic Voyage

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この映画は個人的に本当に思い出深い映画です。

恐らく映画でSF体験をした最初期の作品だと思います。

人間の体内にミクロ化した潜水艦で侵入し、脳みその血塊を除去しに行くという、子供が興奮しないほうがおかしい抜群のプロットがとにかく最高です。

そして、何より素晴らしいのは、この映画が「大作」として真剣に作られていることですね。さすが20世紀フォックスです。1967年製作なので、その後の本格的なメジャーSF映画の嚆矢と言って差し支えないんではないでしょうか。

また、リチャード・フライシャーによる「大作なのにキッチリ自分の個性を打ち出してくる」作風が、この映画を唯一無二の作品にしていると思います。

レナード・ローゼンマンによる機械的な音楽によってタイプライターのように打ち出されていくクレジット。このオープニングの不穏さはそのまま『アンドロメダ……』にも影響を与えていますよね。

潜水艦を縮小していく過程をとにかく綿密に描いていく前半部分。ミニチュア化の時間は60分となっており、時間が切れると大きくなってしまうというタイムリミットサスペンスが秀逸。しかも、この映画全編がほぼリアルタイムに進行しており、後半の60分はそのまま60分かけてちゃんと描かれる素晴らしさ。

そして、フライシャーは前半部分に音楽を一切付けない。これによって、否が応でも緊張感が高まり、なおかつ体内に入った瞬間から音楽が鳴り始める開放感が秀逸なのだ。

やたらと魅力的な美術も特筆モノで、どれもこれもレトロな味わいを超えたセンス・オブ・ワンダーにあふれています。

キメキメのシネスコ構図がたまらない。20世紀フォックスの作品ですから冒頭に「シネマスコープ!」ってちゃんと出るのが熱いよね。

指揮官の将軍と科学顧問の二人が地上での主要人物で、ほとんどこの二人に絞って展開させているのも上手い。周りのスタッフはとにかくキャラクターを廃した演出を施されていて、それがまた妙にリアリティを生んでいるのです。

砂糖にたかるアリを潰そうとして思いとどまる将軍。こういうシーンがサラっと挿入されるのも映画の格を上げています。

そして、有名な「ハサミ」のサスペンス! 潜水艦が内耳で作業をしているので、周りの医師たちは音も立てずに息を潜めている。しかし、汗をかきはじめた医師のために看護師がタオルを取ろうとした時!!!

なんと1カット処理をしていたりして、ほんとフライシャーの抜け目のない演出が冴え渡ります。

ドナルド・プレザンスが、どう考えてもテリー・サバラスと同じぐらいキャスティングの段階で「裏切り面」なのが微笑ましいんですが、もちろん子供の頃はハラハラドキドキなんてもんじゃなかったですよ。そして、このトラウマ確実の断末魔!


子供の頃とにかくこのエンディングのショットが印象深かったです。俯瞰の構図で今まで機械的に描かれてきたスタッフたちが大喜びで生還を喜びあうんですよねえ。そして、映画はスパっと見事に終わる。

ハリウッドの良質の娯楽映画はとにかく余計なドラマとかがないのが大好きです。登場人物のバックボーンは言うに及ばず、ストーリーの前後もちんたら描かない。エンディングもここぞというところでスパっと終わる。エピローグなんてなし。これがいいんですよね。

ブルーレイは4Kマスタリングによる高画質で、しっかりとしたフィルムの味わいが堪能できます。



ミクロの決死圏』はアイザック・アシモフのノベライズでも有名で、ボクが最初にアシモフに出会った作品でもあります。まあ、べらぼうに面白かった記憶がありますよ。アシモフ本人は気に入らなかったようですがw