男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『イヴの総て』★★★1/2

気味の悪い「ヤドカリ一家」系サスペンス

世の中のマリリン・モンローファンの殆どがそうであるように、ボクもこの映画はマリリン・モンローが端役で出演した映画ということで最初に認識しました。

なので、マンキーウィッツが2年連続監督賞と脚本賞を同時に受賞したとか(すげえな)、ベティ・デイヴィスの代表作だとかいった情報は結構後になって得たものです。「『イヴの総て』ってマリリン・モンローが端役で出ているのを抜きにしても名作なんだな」ってことはなんとなく認識しつつも、グダグダと観損ねたまま(モンローの出演しているシーンは色んな映像で観ていましたけどね)21世紀に至ったというわけです。

今回「シネパス」の企画で上映される「未見の名作」の中でも「これはちょうどいいや」度がかなり高かったので、(やっぱり)根性で早起きして観てきました。

これがね、当然「名作」なんですよ、やっぱり。でも、想像していた映画とはまるで違っていて、かなり「サイコじゃないサイコ・サスペンス」といいますか、やはり思い出すのは最近頻出する藤子不二雄A先生の『魔太郎がくる!!』に登場した「ヤドカリ一家」の構造なんですね。

ネタバレになりますが、冒頭と終幕がつながっている構造と、そのままそれが「同じことが繰り返される」という「現実感満点の気味の悪さ」につながっていて、ドラマの部分とは別の「ホラー映画」としてのスタイルがよく出来ているんですよ。当然マンキーウィッツをはじめとした製作者たちはそういった意識はなかったかもしれませんが、キーになるアン・バクスター演じる「イヴ」が結局自分も同じような「女」の登場で酷い目に遭うであろう未来を象徴しつつ終わるエンディングが実にホラーしているんですよねえ。逆に言えば、あの手のホラー感ってのはこの映画が最初だったりするのかもしれませんね。

とは言え、昨今の安直な「後味悪い」系のホラーやサスペンスなどとは違い、ジョージ・サンダース演じる批評家に全部バレて強烈なビンタまで食らったり、瓦解させたと思ったカップル二組はちゃんとよりを戻してイヴを冷笑する立場になっていたり、地位や名誉は手に入れても中身は空っぽ(しかも、自分も多分その後酷い目に遭うw)という因果応報がキッチリしていて、観客のカタルシスはなかなかのものなんですよね。あれは気持ちいい。


イヴを演じるアン・バクスターがまた絶妙のキャスティングで、母性本能をくすぐるような可愛らしい顔をしつつも、だんだんと腹黒なところを見せてくる感じとか、「いい娘」ブッて段々と周りに取り入りつつ、古株のセルマ・リッター(相変わらず最高w)にはバレバレで嫌われている感じね。個人的に「媚びへつらう」系の人間にむかっ腹が立つ方なんで、「アン・バクスター可愛いなあ!」と思ってる自分が駄目だなあと自戒を込めて。

それにしてもアン・バクスターは可愛い。

髪型とかもド直球なんですよねえ。踏み台にされても自分を責められないな。


そして、よく言われますが、ベティ・デイヴィスが強烈な存在感。どの場面でも「ああ、こういう人なんだな」って一発で分かるの。あれは凄い。


「女優志願の卵」役のマリリン・モンロー。「野心」がこれっぽっちも感じられない憎めなさが良いキャスティングです。しゃべり方とか風体はもう完全にモンローなんで、結構目立ちますけどね。


追記:

そういえば、冒頭の受賞シーンでのストップモーションの使い方が素晴らしかったなあ。エンディングでこのストップモーションからドラマが再開し始めるということで、本当にこの一瞬で登場人物たちがそれぞれイヴに関して回想しているという映画的な演出。しかし、あのドラマ10ヶ月ぐらいの話だったんだってかなり無理があるようなw