男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

やってくれたなキュアロン!究極のサバイバル・スリラー『ゼロ・グラビティ』★★★★


アルフォンソ・キュアロンの前作『トゥモロー・ワールド』を観た「その手の映画ファン」たちは大なり小なりこう思ったもんだ。

「この過剰で異常な緊張感が全編続く映画をもった観たい」

と。

そして、

「どうやらキュアロンが宇宙でサバイバルする映画を撮ろうとしているらしい」

との情報が流れ、「この手の映画ファン」たちは大なり小なりこう思った。



「こ、これは、まさか、やっちゃうんじゃないのか!?」と。



トゥモロー・ワールド』から早7年。


遂に我々の前に現れた「その映画」は、期待に違わぬどころか、期待以上の究極のサバイバル・スリラーであり、


「過剰で異常な緊張感が全編続く上に、キチンとしたエンターテイメントになっている」


とてつもない傑作だった!!


その名は『GRAVITY』


”重力”というシンプル極まりないタイトルだが、これ以上ないほど的確なタイトル。


ほとんどの傑作は一行のプロットで説明できる。この映画も簡単だ。

「宇宙で事故にあった主人公が必死に生き延びようとする」

これだけ。


そして、この映画はパニック映画の傑作である『ポセイドン・アドベンチャー』でスターリング・シリファントが提示した「アクシデントに陥った人間が生きるために全力で戦う」というパニック映画至高の精神に、40年ぶりに到達した作品とも言える。『大空港』によって始まったオールスターパニック映画路線の中で、唯一後世に残る作品はシリファントが脚本を書いた『ポセイドン・アドベンチャー』と『タワーリング・インフェルノ』の二本だけだが、その後の映画がいくらその領域に挑戦しようとしても成功しなかった次元に、遂にキュアロンが「宇宙空間」という舞台を用いて到達したのは「その手の映画史」に残る偉業といえる。


この映画を形而上的な部分で語ろうとすると必ず足元を救われる。

この映画は「宇宙空間で死の恐怖に立ち向かうサスペンス」以外の何物でもない。

エマニュエル・ルベツキの異様に美しくトリッキーな撮影も、サンドラ・ブロックによる見事過ぎる芝居も、スティーブン・プライスの緊張とエモーショナルを融合させた音楽も、キュアロン親子による脚本も、キュアロン自身とマーク・サンガーによる編集も、そして常に主人公に密着した迫真のサウンドイフェクトも、すべてが「サスペンス」を生み出すことに従属している。

この素晴らしさ。




<以下全編激しくネタバレをしています>


91分という素敵過ぎる上映時間の内、緊張感がないシーンは冒頭の数分と、ラストの数秒だけ。まさに「これだよ、これ!!」の塊とも言えるこの作品。

事前の情報をすべてシャットアウトしてIMAX3Dで観ました。

冒頭の美しい地球のショットからアッという間に宇宙空間に引きずり込まれ、通信音声と体内の音と伝わってくる振動以外は「無音」という「これしかないだろ!」という音響設計からして「キタキタ」という期待に胸が踊る。

そして、ロシアによるスパイ衛星爆破によって大量に発生したデブリ(ゴミ)が衛星軌道に乗って主人公たちのシャトルに襲いかかり、アッという間に地獄絵図に突入!

なんと、ここまでワンショット!!!

キュアロンが『トゥモロー・ワールド』で見せた「これ、まさかワンショットでやるのかよ!?」というアレを冒頭からカマしてくれる。

ジョージ・クルーニーが本人の役としか思えない「常に冗談を言い続けているが、ピンチでは常に冷静で頼りになる(それでも冗談は言い続ける)チーフ」を見事に演じ、その「世界の頼れる兄貴」ブリを遺憾なく発揮。加えて主人公のライアン・ストーン博士をサンドラ・ブロックがこれまた最高の芝居でみせる。

まず、いきなりふっとばされた主人公が延々と回転運動をし続けるあたりから、「宇宙だからだよ!! 最悪だ!!」と観客にタップリと嫌な汗を出させる。

そこに、クルーニー兄貴が助けに来てくれとホッと一息つけるも、当たり前のようにシャトルは大破(こうこなくちゃ!)。それじゃ、ISS国際宇宙ステーション)に行くしかないと、命綱をつないで何とか辿り着くも、そこでも慣性が大きなサスペンスを生む。宇宙空間に空気がないというサスペンスは当たり前なのだが、この「動きを制御できない」恐怖と緊張感が常に全編を支配している。なんとかパラシュートの紐に足が絡まって助かるサンドラ・ブロックだったが、クルーニーは彼女を助けるために掴んだ命綱を自ら外す。定番とはいえ宇宙飛行士の「生き残るための最善の手を瞬時に判断して実行する」凄みを十分に味あわせてくれる。しかも、映画としては頼り極まるクルーニー兄貴の退場によって、緊張の加速度が振りきれる。まさにクルーニーのキャスティング勝ち。しかも、クルーニーときたら自分は死ぬのが分かっていても、冷静にサンドラ・ブロックにエアハッチの場所を通信で誘導したり冗談を言ったり励ましたりをずっと続ける。これは泣ける。さすが兄貴!!!

そして、兄貴がいなくなってからの絶望感。

ISSも人員は脱出して無人。しかも、残ったソユーズはパラシュートが開いてしまって大気圏突入は不可能。兄貴の遺言に従って、今度はまた遠くに浮かぶ中国の宇宙ステーションへ行かなければいけない。

そこへ畳み掛けるようにISSの中で火災が発生!!

もうね、こうなったらヤバイというシチュエーションの波状攻撃。

スリラーはこうでなければ!!

なんとかソユーズに乗り移って脱出しようとするサンドラ・ブロックだったが、今度は自分を助けてくれたパラシュートが絡まってISSから離れられないという皮肉。だったら、切り離してやると再度宇宙服を着込んで船外へ。またまた無音の恐怖の中、デブリが再襲来!!! 無音でドゴンバゴンISSを粉々にしていくデブリの恐怖!!! そして、その中を逃げまわる手に汗握るどころか足の指まで汗をかく緊張感。

挙句に今度はソユーズに燃料がなくなっていて、絶体絶命。

そこで、なんと兄貴が帰ってくる!!!

あの時の安堵感!!!


兄貴は魂になっても助けに来てくれる!!


ルーニー最高!!!!


ルーニーの魂の助けを得て何とか知恵を絞ったサンドラ・ブロックソユーズの着陸時の逆噴射を利用して中国の宇宙ステーションへ向かう。


そうしたら、なんと中国の宇宙ステーションが大気圏落下を開始している!!


もう、あれですよ。気分は完全にアムロですよ。大気圏突入の絶体絶命の状況でも「説明書を常に確認」! これだよこれ!!!

「間に合うか、前回路接続」的な。


全編で何度か描写されるこの「説明書を読む」サスペンスね。あれは燃えるよ。ヤバイ。しかも中国の宇宙ステーションは表示が「漢字」!!


ついでに卓球のラケットまで浮かんでましたからね。そりゃ焦るって。


でも、その中国製帰還ポッドは見事にサンドラ・ブロックを地球へ帰還させる。

ところが、海上に落下したポッドが水没し始めて………

やっと海中に出ても今度は宇宙服のせいで浮力が………


この最後の最後まで油断も隙もない緊張感は狂気すら感じさせる粘着質。


まあ、だからこそ、地上に降り立ったサンドラ・ブロックが「重力」のありがたさを知るラストで感動するんですけどね。


そこで、映画はブツっと終わり。完璧。


余計なエピローグは映画には要らない。結局役者はクルーニーサンドラ・ブロックしかいなかったし!!!


加えて、エンド・クレジットのキャストで「管制官の声:エド・ハリス」って出た時は緊張からの開放もあって、吹き出しそうになりましたよ。そりゃクルーニーも終始「このミッションは嫌な予感がする」とぼやきたくなるってもんでしょう。


宇宙大好き人間として、そしてサバイバル・スリラー大好き人間として、完全に「自分のために作ってくれた」としか思えない映画でした。


ありがとうキュアロン。次回作は全編洞窟の暗闇映画でも作ってくれ。


・・・


追記


デモリションマン』以来のサンドラ・ブロックファンとしても、これ以上ないぐらいサンドラ・ブロックの美貌がタップリと味わえる映画であることも付け加えておきます。実はサンドラ・ブロックのアイドル映画としても十分機能しているほど、キュアロンはサンドラ・ブロックを美しく撮っています。しかも、黒髪のショートですからね!!!! たまりませんよ!!! そりゃ宇宙服を脱いで一息つくシーンを必要以上に長く撮るはずだよww あれは惚れるね。あと、無重力の中を浮かぶ涙ね。あれが一番驚いたよ。びっくりしたよ。サンドラ・ブロック泣かないで涙が出てくる芝居をしたのか?!



まああ、とにかく傑作ですよ。強力におすすめします!


何故か今だに国内でブルーレイが発売されないキュアロンの傑作。『アズカバンの囚人』の監督とはこの映画以降誰も言わなくなったw


デモリションマン [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2011-01-26)
売り上げランキング: 35,954

あなたが寝てる間に… [DVD]
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2005-12-07)
売り上げランキング: 1,826

キュートなサンドラ・ブロックが堪能できる三本。最近年齢に合わせた姉御肌なキャラが多かっただけに、『ゼロ・グラビティ』は久々に可愛いサンドラ・ブロックが堪能できただけでも眼福。