男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ドラゴン・タトゥーの女』★★★1/2

フィンチャーの娯楽志向

フィンチャーは浮き沈みの激しい監督だ。《奇数=失敗、偶数=傑作》とからかわれるぐらい。
鳴り物入りでデビューした『エイリアン3』でガックリ(でも映像はすげえ!)、続く『セブン』で驚愕(やっぱり映像がすげえ!)、マイケル・ダグラス?の『ゲーム』でムムムム(まあ映像はいい)、今度は大丈夫か? ブラピがヌンチャク!『ファイト・クラブ』(うううん、映像すごい)、フィンチャーは信用できる、大丈夫と『パニック・ルーム』で「なに、これ?」(それにしても相変わらず映像は凝ってるなあ)、ゾディアック事件! これならフィンチャーいけるだろう、ぬお! 傑作!『ゾディアック』(フルデジタル撮影の映像超クール!)、のってきたぞフィンチャー!『ベンジャミン・バトン』……ううん、いいんだけど、フィンチャーじゃなくても(巨匠の風格が漂い出す映像)、Facebookが題材!? 時代を先取りしてる感じがフィンチャーらしい、ただ事じゃない傑作『ソーシャル・ネットワーク』(遊び心が戻ってきたし、何よりかっちょ良すぎる映像)!

で、いよいよ鬼門の「奇数」回ですよ。

フィンチャーもジンクスを気にしているのか(そんなわけ無いでしょうけど)、全世界ベストセラーな上にスウェーデン版の映画が作られて2年ぐらいしか経っていないという『モールス』状態(あっちもスウェーデンだ)。

いや、だったら、マット・リーヴス監督に倣って今度も成功確実?

という、今度こそは、外せない。これを外したらまた負の連鎖に巻き込まれる。

そんな余計な心配ごとを孕んだデヴィッド・フィンチャー監督の9作目。

ダニエル・クレイグが主演だからなのか、【暗黒の007】と言ったムード満点のスーパークールなタイトル・シークエンスで幕を明けた『ドラゴン・タトゥーの女』は、何と遂にフィンチャーの奇数映画のジンクスを破って大成功!

『セブン』でもナイン・インチ・ネイルズの『クローサー』をバックに、カイル・クーパーが全世界の映像職種の連中の横っ面をぶっ叩いた伝説のタイトル・シークエンスを採用したように、クールでセンスの塊のような中にも熱い娯楽魂を宿しているフィンチャー。そんな娯楽志向を隠すことなく真正面から披露した今回の作品。題材的にも『セブン』『ゾディアック』に続くサイコ・サスペンス・ミステリーとして、両作を足して二で割ったようなバランスの良い傑作に仕上がっていました。

勿論どちらかに振り切ったほうがより良い作品に仕上がったマージンも感じますが、『ゾディアック』以降やたらと円熟味すら感じさせる演出だっただけに、『セブン』などのファンにしてみたらそういう娯楽志向(悪く言えば俗っぽい)に舵を切っているのは嬉しい驚き。

スウェーデン版の映画を最初に観て、今回は直前に原作も読んでいたからなのか、スティーブン・ザイリアンによる脚色の良い面と拙い面もよく分かって勉強になりました。

(長くなりそうなので続く)



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ソーシャル・ネットワーク』に続いて、トレント・レズナーのサントラがまた傑作。

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早くも3月20日に発売されるアメリカ盤ブルーレイ。日本公開版では盛大なモザイク処理がほどこされてしまったので、ここはオリジナルをちゃんと観たいところ。早速予約しました。



原作も傑作。様々な要素を詰め込みながら、基本的には古き良き古典的なミステリーの体裁を守っている。



スウェーデン版。テレビ放送用の3時間バージョン。劇場版はシネスコサイズでしたが、こちらはマスクを外したビスタサイズ。とてもテレビ用とは思えないクオリティの高い傑作。