男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ジョナ・ヒル主演の『マネーボール』★★★

運動神経ゼロデブ世代の革命的野球映画誕生

あらすじ

イエール大学で経済学を専攻していた主人公ピーター・ブランドは野球を統計学的に捉えるセイバーメトリクスの導入を胸に秘めていたが、生来の引っ込み思案のせいでそれを誰にも言えずに悶々とした日々を送っていた。そんなある日、別球団から選手のトレードに現れた金髪のイケメンおやじビリーが彼に興味を抱く。そして、次の日「お前を買った」という電話を受けて……


『スーパーバッド』でブレイクしたデブ俳優ジョナ・ヒルが、明らかにモテないデブだったのとは打って変わって、(おそらく)お母さんに買ってもらったオーダーメイドのスーツに身を包んでイエール大学出身のインテリデブに華麗に変身。短い手足をチャーミングに振りまいて映画に華を添えています。

球団関係者のスーパーマッチョたちに囲まれてマスコットキャラのように東奔西走する姿は大変魅力的。

ビリーに半ば強引に翻弄されながらも、引っ込み思案のデブが最も苦手とする「解雇宣言」などの「コミュニケーション」スキルを徐々にみにつけていく姿は文句なしに応援してしまう。中でも白眉なのは選手獲得に際して各球団にそれぞれ電話をして交渉するシークエンス。ここでも球団のオーナーに強請に近い交渉でカネを出させる大活躍。不器用なガッツポーズにこちらもニンマリ。

選手たちにセイバーメトリクスのための説明を懇切丁寧にしている場面でも、シャツに出来てしまったシミを懸命に拭おうとする細かいシーンが爆笑。


ビリーが大球団からの誘いに悩んでいる場面でも、108キロのデブ選手のプレイをつかって説得。よく分からない涙を誘う。


共演の先輩デブ俳優フィリップ・シーモア・ホフマンも、十八番である「いいところがまるで無い」監督を空気のような存在感で好演。デブの両翼を担ってジョナ・ヒルをもり立てています。


大好きな『カポーティ』の監督ベネット・ミラーによる弱者に立ちする優しく熱い眼差しが、寒々としたお得意の絵作りの中に充満していてなんとも言えないいい気分に。


名脚本家スティーブン・ザイリアンの脚本を、脂ののりまくっているアーロン・ソーキンが改稿した脚本は娯楽性を保ちながらも「負け犬」たちへの愛情がたっぷり詰まった傑作に仕上がっています。

クライマックスからのエピローグが少し冗長に感じられ、そこでちょっと疲れてしまうのが残念といえば残念。



主演の三人も監督もそれぞれ大活躍中。原点のこの作品も素晴らしい。



フィリップ・シーモア・ホフマンの怒声演技が堪能できる傑作。

誰でも一度はこれだけ相手に怒声を発してみたいもんだ。